Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

特別企画
教育講演2

(S153)

あくせくしないで心エコー-目的を持った検査と患者から学ぶ姿勢-

Smoother echocardiography -Intended examination and learning something from patients-

羽田 勝征

Yoshiyuki HADA

榊原記念クリニック循環器内科

Department of Cardiology, Sakakibara Memorial Clinic

キーワード :

 どの施設でも心エコー検査件数は増加の一途をたどり,検査に従事する医師やソノグラファーにとってはストレスフルな毎日である.依頼目的がはっきりしない検査,記録困難な症例,急がない緊急検査,見落としや知識不足によるヒヤリハット,思いもよらない結果,に始まって,症例が集まらない,有意差が出ない,・・・・・等,“あくせく”の連続である.検査にあくせくは不可避である.あくせくと感じるかどうかは検査者,読影医師の意識と充実感の問題である.あくせくの後には喜びがある.優れた研究は“あくせく”の苦しみから生まれたものである.
1.“あくせく”を克服するための七か条
1)目的を持った心エコー検査に徹する.
 ルチンの数をこなすだけの惰性的検査は慎むべきである.目的が不明瞭な検査は依頼医の責任である.何を知りたいのか,何が異常なのか,何を否定したいのか,何のための再検査か,がわかる簡潔な依頼とそれに答えた報告の作成に集中すべきである.検査前のカルテチェックも大切である.
2)知的好奇心と探究心を持つ.
 この二つは診療の場でも不可欠である.臨床研究は,数少ない症例から法則性,あるいは方向・共通性を誰よりも早く見つける競争,である.アイデアは日頃の鋭い観察と洞察力から生まれる.関心を持ち,疑問を解決しようとする努力が必要である.
3)症例から何かを学ぶ.
 生体情報には不確定要素が多い.疾患・病態は多様である.多様性と法則性は相反する.同じ病気でも同じ所見とは限らない.症例から何かを学ぶ習慣を身につける.いかなる論文よりも自分の経験した一患者,一所見のほうがはるかに重みのあることがある.“患者から学ぶ”という名言がある.
4)新たな疑問を見つける.
 今までの報告と異なった,あるいはエビデンスから逸脱した所見やデータを経験することがある.過去の論文の限界・弱点を知るチャンスになる.新たな疑問は新しい研究に繋がる.二度同じ疑問をもち,三度経験すればその後の検査と読影には興味が湧く筈である.
5)日頃の疑問を解決する.
 ある時,ある患者の検査や読影で以前から抱いていた疑問が一気に解決されることがある.新発見になることもあれば,すでに報告された論文を見つけ落胆することもある.いずれも貴重な経験となる.日頃から広くアンテナを張り巡らせておく行為は大切である.
6)説得力のある記録に徹する.
 他人が納得してくれない記録には何の価値もない.観察した動画をすべて見る医師はいないし,不可能である.昔はたった一枚の静止画像に多大な努力を費やしたものである.画像から検査者の思いが伝わることがある.伝えるべきである.添付された一枚の画像から論文の妥当性が直観できることがある.
7)失敗から学ぶ.
 積極的に読むべきである.読影しなければ失敗はない.後のフィードバックがなければ,ヒヤリハットには気付かないし,進歩はない.苦い思いが新発見やアイデアに結びつくことがある.他人の失敗は自分の経験にもなる.大いに議論できる環境づくりは大切である.惰性防止にもなる.
2.あくせくしない心エコー検査の実際:心房細動例を対象にして