Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

特別企画
特別企画2 超音波による硬さの評価
特別演題企画4 領域横断:硬さの臨床 各領域で硬さは何を意味するのか?

(S141)

耳下腺腫瘍における硬さの臨床的意義と組織弾性イメージング

Clinical significance of elasticity and elasticity imaging of parotid tumor

古川 まどか1, 古川 政樹2, 久保田 彰1, 八木 宏章1

Madoka FURUKAWA1, Masaki FURUKAWA2, Akira KUBOTA1, Hiroaki YAGI1

1神奈川県立がんセンター頭頸部外科, 2横浜市立大学市民総合医療センター医療情報部

1Department of Head and Neck Surgery, Kanagawa Cancer Center, 2Division of Medical Informatics, Yokohama City University Medical Center

キーワード :

【目的】
耳下腺腫瘍の診断はかつては触診が主体で,腫瘍の存在や大きさ,形状,硬さ,可動性をもとに,良悪性,組織型,摘出可能か,顔面神経温存の可否などを総合的に判断してきたが,得られた情報を客観的な記録として残せないことが問題点であった.現在では,より客観的に多くの情報を得ることができる超音波診断を術前に行うのが一般的となった.今回はとくに耳下腺腫瘍における組織弾性イメージングの検討をおこなった.
【対象および方法】
2009年4月から2010年11月までに手術を施行した耳下腺腫瘍症例で,術前に組織弾性イメージングを施行した10症例(良性7例,悪性3例)を対象とし,術前組織弾性イメージングと手術所見,病理診断を比較し,その臨床的意義について検討した.良性腫瘍は多形腺腫4例,ワルチン腫瘍3例,悪性腫瘍は腺癌NOS 2例,腺房細胞癌1例であった.日立Hi-Vision900のreal time tissue elastographyを用い,耳下腺腫瘍に加えて,正常耳下腺組織,咬筋もしくは胸鎖乳突筋が同時に描出される断面で組織弾性イメージングを施行した.
【結果】
良性腫瘍のうち多形腺腫では,腫瘍内部の硬さはほぼ均一で緑色が主体であるのに対し,ワルチン腫瘍では緑色に赤色が入り,多形腺腫よりも軟らかく表示される傾向が認められた.いずれの腫瘍でも境界部で腫瘍周辺の耳下腺組織が赤く表示され,周囲耳下腺組織への浸潤がないことを表していると考えられ,実際の手術所見でも周囲組織や顔面神経との癒着はなく摘出可能であった.一方,悪性腫瘍の中でも悪性度が高い腺癌NOS症例では,腫瘍は青色で硬い腫瘤として表示されるとともに,腫瘍境界部を越えて青色や緑色の硬い部分が広がり,周囲耳下腺組織への腫瘍浸潤があるものと考えられた.実際の手術所見でも,周囲耳下腺組織や顔面神経との剥離は困難であった.悪性腫瘍の中で悪性度があまり高くない腺房細胞癌症例では,腫瘍境界部でやや青色,緑色の部分が不規則に認められたが,その周囲の周辺耳下腺組織では赤色を呈していた.実際の手術所見でも,腫瘍に周辺耳下腺組織をつけて浅葉摘出術を施行することで顔面神経の温存が可能であった.
【結論】
耳下腺腫瘍の組織弾性イメージングでは,腫瘍の硬さとともに周囲耳下腺組織への浸潤の有無も知ることができ,術前の良悪性診断および手術術式の決定に有用であると思われた.