Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

特別企画
特別企画2 超音波による硬さの評価
特別演題企画4 領域横断:硬さの臨床 各領域で硬さは何を意味するのか?

(S140)

乳腺領域における「硬さ」の臨床-摘出検体で測定した弾性係数とエラストグラフィ所見-

Clinical significance of “Stiffness” in breast disease

梅本 剛1, 2, 松村 剛3, 藤原 洋子3, 坂東 裕子4, 東野 英利子4, 山川 誠5, 三竹 毅3, 森島 勇1, 椎名 毅6, 植野 映1

Takeshi UMEMOTO1, 2, Takeshi MATSUMURA3, Youko FUJIHARA3, Hiroko BANDO4, Eriko TOHNO4, Makoto YAMAKAWA5, Tsuyoshi MITAKE3, Isamu MORISHIMA1, Tsuyoshi SHIINA6, Ei UENO1

1筑波メディカルセンター病院乳腺科, 2筑波大学附属病院乳腺甲状腺内分泌外科, 3株式会社日立メディコUSシステム本部, 4筑波大学大学院人間総合科学研究科, 5京都大学先端医工学研究ユニット, 6京都大学大学院医学研究科

1Department of Senology, Tsukuba Medical Center Hospital, 2Department of Breast-Thyroid-Endocrine Surgery, Tsukuba University Hospital, 3Ultrasound Systems Division, Hitachi Medical Corporation, 4Graduate School of Comprehensive Human Sciences, University of Tsukuba, 5Advanced Biomedical Engineering Research Unit, University of Kyoto, 6Graduate School of Medicine, University of Kyoto

キーワード :

【はじめに】
Real-time Tissue Elastography(以下エラストグラフィ)をはじめに各種の組織弾性イメージングが提案され,「硬さ」という質的特性を簡便かつ非侵襲的に得ることが可能となった.エラストグラフィは,体表臓器である乳腺・甲状腺以外の領域にも幅広く臨床応用され,その有用性に関する報告も多くみられる一方,手技依存性(「初期圧迫」など)や定量性といった課題も指摘されている.これらを解決していくためには生体組織がもつ弾性特性についての理解が重要であり,その基礎的な知見を得るため,われわれは摘出直後の手術検体を用いて乳房内各組織の弾性係数(ヤング率)を測定し,術前エラストグラフィ所見と対比する検討を行っている.
【対象】
平成19年5月以降,術前に説明および同意文書を用いて承諾を得た乳腺疾患症例を対象に検討を行った.なお本研究は,筑波大学附属病院および筑波メディカルセンター病院の倫理委員会より承認を得ている.
【方法】
摘出直後(ホルマリン固定前)の手術検体から,対象病変および周囲の正常組織を約5mm厚にスライスした標本を作成した.専用の硬さ測定機(インストロン社3342型)を用いて,体温条件を想定した温度管理および一定の初期加重のもと,毎分1mmの速度で標本に圧を加え,圧縮歪み30%まで対象病変および周囲正常組織の弾性係数(ヤング率)を測定した.組織変性による測定や病理組織診断への影響を最小限とするため,測定は手術検体摘出後2時間以内に終了した.測定により得られた弾性係数,術前に記録したエラストグラフィ所見と病理組織所見との対比を行った.
【結果】
対象症例すべてにおいて,測定により得られた弾性係数,術前に記録したエラストグラフィ所見と病理組織所見との対比が可能であった.正常組織(脂肪,乳腺)と病変部との間には弾性係数の差が確認され,つくば弾性スコアやFat-lesion ratio(FLR)といったエラストグラフィ所見から得られた結果や病理組織所見の内容とも合致する傾向であった.
【まとめ】
摘出直後の手術検体を用いて弾性係数を測定,エラストグラフィ所見との対比を試みた.乳房内各組織の弾性係数の違いは病理組織所見を反映しており,エラストグラフィによって高精度に画像化されていると考えられた.今回,われわれの検討結果から,乳腺領域における「硬さ」のもつ臨床的意義について述べたいと考えている.
※Real-time Tissue Elastographyは,日本及びその他の国における(株)日立メディコの登録商標または商標です.