Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

特別企画
特別企画2 超音波による硬さの評価
特別演題企画3 領域横断:硬さの基礎 硬さを測る方法を整理して理解する

(S138)

肝疾患診断と硬さ計測-各モダリティーにおける測定原理と結果の解釈

Diagnosis of Liver Diseases and Assessment of Liver Stiffness : Principles of Measurement and Date Evaluation among each Method of Elastography

矢田 典久, 工藤 正俊

Norihisa YADA, Masatoshi KUDO

近畿大学医学部消化器内科

Department of Gastroenterology and Hepatology, Kinki University Faculty of Medicine

キーワード :

【はじめに】
 肝線維化を測定する方法としては,肝生検がgold standardとされてきたが侵襲的検査であり繰り返して行うことも困難である.それに変わる方法として採血検査を利用したバイオマーカーも多数存在するが,肝臓以外の影響も強く受ける.最近,超音波を利用したElastographyが開発され,国内では,FibroScan (FS)・Virtual Touch Tissue Quantification (VTTQ)・Real-time Tissue Elastography (RTE)が,研究面で普及しつつある.今回はこれらの各種超音波Elastographyの原理と測定方法の違い,検査方法によって得られるデータの解釈,これらを臨床の場で利用するに当たっての注意点などについて検討した.
【肝エラストグラフィの分類,原理,結果の解釈】
 超音波Elastographyは,大きく分類すると振動・波の伝播速度を測定するものと,外圧による組織の歪み具合を可視化するものとに分けられる.
 硬い組織ほど物質の伝播速度は速くなることが知られており,E=3pVs (ヤングの法則,E:ヤング率=剛性stiffness,p:密度,Vs:速度)という計算式が成り立つ.FSは,体外から専用機で剪断波を発生させ,その縦波の伝播速度を測定しヤングの法則に当てはめstiffness (kPa)を算出する.同様にVTTQは,収束超音波パルスによってROI辺縁に剪断波を発生させROI内部に起こる横波の伝播速度 (m/s)を測定する.これらは共に絶対評価でありQuantitative Elastographyと言える.しかしFSはA-modeとM-modeしか搭載されていないため,測定にはやや慣れが必要であった.また,腹水・狭肋間・厚い皮下脂肪などでは剪断波が肝に伝播されず測定不能例が存在した.一方VTTQはB-modeを見ながら任意のROIを設定でき特定の部位の硬さを測定することも可能である.しかしFSやVTTQでは,肝の炎症が強いとき・黄疸・鬱血肝・長時間の息こらえなどでは伝播速度が増加し高値 (over estimation) になる傾向があった.
 一方,組織は振動や圧迫などにより変形するが,硬い組織ほど変形の度合い(歪み)が少ない.RTEは,ROI内の組織の歪みの度合いをカラーで相対表示するQualitative Elastographyである.ここで表示されるのはあくまで相対表示であり絶対的な硬さを示しているわけではないので注意が必要である.我々が行ったC型慢性肝炎・肝硬変患者の解析では,肝線維化が進むにつれて硬さを示す青い表示が増え,不均一な画像になった.これらの画像の特徴量から重回帰式を作成しLiver fibrosis index (LF Index)を算出することでQuantitative Elastographyとして利用している[1].また,FSやVTTQとは異なり,肝内に炎症や黄疸などがあったとしてもRTE画像には影響を及ぼさなかった.腫瘍の評価は周囲肝との比較でしか行うことができないため,必ずしも有用とは言えなかった.
 またB-modeで肝がうまく描出できないような症例では,いずれの方法でも測定は困難であった.
【まとめ】
 超音波Elastographyと一言で言っても,測定方法の違いから全く異なった結果が得られることがある.生体内部の情報をより正確に把握するためには,これらの測定原理を理解した上で正しく利用する必要がある.
【参考文献】
[1]K. Fujimoto, M. Kato, A. Tonomura, N. Yada, et al., Kanzo , 2010, vol. 51 pp. 539-541.