Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

特別企画
特別企画2 超音波による硬さの評価
特別演題企画3 領域横断:硬さの基礎 硬さを測る方法を整理して理解する

(S137)

がん診断と硬さ計測-乳腺領域超音波エラストグラフィの臨床状況

Clinacal Status for Breast Sonoelastography

中島 一毅

Kazutaka NAKASHIMA

川崎医科大学乳腺甲状腺外科

Breast and Thyroid Surgery, Kawasaki Medical School

キーワード :

最近の超音波診断装置の新技術においてTissue Elasticity Imaging(エラストグラフィ,ひずみ像)は最も特筆するものであり,急速に普及している.特に乳腺領域ではマンモグラフィ検診の普及とともに乳癌が疑われる微小病変での検出が増えている.通常のBモード超音波検査で鑑別できない病変は細胞診,針生検,VAB,切開生検が推奨されるが,その多くは良性病変である.エラストグラフィには,良悪性鑑別の精度が向上により不要な生検例を減らすことが期待されている.乳癌において硬さの情報は筑波大学臨床医学系の植野らにより初めて言及されDynamic testとして報告された.この固さの情報を診断に用いようという考えは超音波を用いて組織の弾性(固さ)を検出して非侵襲的・客観的に評価するための新しい画像診断の手法として,1991年にテキサス大学のOphir教授らによりエラストグラフィ(Elastography)という名称で発表された.2001年には椎名らと日立メディコの共同研究により,組織弾性イメージング手法が商用超音波診断装置に搭載された.本技術は「Real-time Tissue Elastography」と命名され,超音波による「エラストグラフィ」が世界に広まる先駆けとなった.2007年に持田シーメンスメディカルシステムから「Elasticity Imaging」が,2008年には東芝メディカルシステムズから「Elastography」が,2009年にはGEヘルスケア・ジャパンやフィリップスヘルスケアからも「Elastography」が発表された.さらに2010年にはSSI(フランス,国内はキヤノンマーケティングジャパン)から剪断波を用い用手圧迫を使わない新しい手法のエラストグラフィが発表された.これらはいずれもひずみ率から硬さを推計するという質的診断能力を,形態的診断である超音波領域に持ち込んだ概念は共通であるが,その原理も開発の方向性も異なり,得られる画質が厳密には異なる.各手法を用いたエラストグラフィの臨床試験報告も発表されてきているが,原理,方式,画質の異なるものが同じエラストグラフィという言葉の中に含まれており,臨床現場には混乱を招いている.このため,日本乳腺甲状腺超音波診断会議(JABTS)精度管理研究班では,エラストグラフィグループを立ち上げ勉強会を開始した.まず,各技法を分類しまとめる作業をおこなっている.まだ,完成したものではないが,臨床現場に必要な概念であり,各社の実際の臨床画像の提示を中心に,現在までのエビデンスと合わせ報告する.