Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

特別企画
特別企画1 心臓を診る
特別演題企画2 循環器:血流評価法を整理して理解する

(S131)

コントラストによる左室内血流動態の解析

Analysis of left ventricular hemodynamics using contrast echocardiography

石津 智子1, 瀬尾 由広2

Tomoko ISHIZU1, Yoshihiro SEO2

1筑波大学臨床検査医学, 2筑波大学循環器内科

1Department of Clinical Laboratory, University of Tsukuba, 2Cariovascular Division, University of Tsukuba

キーワード :

拡張期左室流入血流動態は渦流の特徴を有する.1970年Bellhouseらは動物実験において拡張期に心基部から心尖部に達した血流が左室流出路に方向を転じて生じる渦流を生じ,僧帽弁の閉鎖に関与すると報告した.微小気泡は赤血球と同様の挙動を示すため,超音波コントラスト剤により血流を可視化できる.コントラスト法の利点は,Doppler法よりもB-mode法の時間分解能に優れること,Doppler法のもつ角度依存性がないこと,ほぼ静止している血液も視認できること,Mモード法により血流の軌跡を画像化できることである.従って低圧で複雑な血流動態を示す拡張期血流の観察にはコントラスト法が適している.健常心では拡張早期に心尖部における左室内圧が心基部よりもわずかに低くなることにより,流入血流は低圧のまま左室心尖部へ速やかに至る.Beppuら1はコントラスト超音波法を用い,犬の冠動脈左前下行枝を結紮すると流入血流は心尖部に達することなく心基部から流出路に方向を転じることを示し,局所壁運動異常により血流の軌道が大きく変化することを明らかにした.すなわちコントラスト超音波法は,心尖部虚血により拡張早期の左室内圧較差が消失したことを明確に示した.びまん性壁運動低下を示す拡張型心筋症例においても,心尖部への血流到達の遅延が左室拡張障害の指標となると考えられる.我々はコントラストM-mode像を用いて左房から左室へ新たに流入する血流尖端の移動速度を計測し,左室拡張機能指標とした.拡張期流入血流の尖端の軌跡は,カラーMモードをE波の40-45%の折り返し速度に設定し計測した左室流入血流伝播速度と近似すること示した.2拡大した不全心では拡張期流入血流尖端の移動速度は低下しており,M-mode像はねじれたロープ様パターンを示し,2D像では拡張早期に僧帽弁前弁尖,および後尖の縁にそれぞれ回旋流が生じ,拡張中期まで回旋流の半径は増大し,あたかもマッシュルーム状の形態を示した3.一方健常例では血流尖端と並行する気泡の軌跡がMモードで示され,拡張早期に出現した回旋流の半径は小さくその後も増大することなく血流尖端とともに速やかに心尖部へと移動した.回旋流の半径と左室血流速度とは負の相関を示し,拡大心における拡張早期左室心尖部流入遅延は大きな渦様血流と関連すると考えられた.
参考論文
1.Beppu S, Izumi S, Miyatake K et al. Abnormal blood pathways in left ventricular cavity in acute myocardial infarction. Experimental observations with special referent to regional wall motion abnormality and hemostasis. Circulation 1988;78:157-164.
2.Seo Y, Ishimitsu T, Ishizu T, Obara K, Moriyama N, Kawano S, Watanabe S, Yamaguchi I. Assessment of propagation velocity by contrast echocardiography for standardization of color Doppler propagation velocity measurements. J Am Soc Echocardiogr. 2004;17:1266-74.
3.Ishizu T, Seo Y, Ishimitsu T, Obara K, Moriyama N, Kawano S, Watanabe S, Yamaguchi I. The wake of a large vortex is associated with intraventricular filling delay in impaired left ventricles with a pseudonormalized transmitral flow pattern. Echocardiography. 2006;23:369-75.