Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般ポスター
体表:乳腺・甲状腺・表在・その他

(S523)

嚢胞内突起甲状腺乳頭癌様の超音波所見を呈し,診断に難渋した1症例

A case showing ultrasonic findings of intra-cyst papillary thyroid carcinoma posed diagnostic challenge

福島 光浩1, 小林 薫1, 太田 寿3, 森田 新二3, 網野 信行2, 宮内 昭1

Mitsuhiro FUKUSHIMA1, Kaoru KOBAYASHI1, Hisashi OTA3, Shinji MORITA3, Nobuyuki AMINO2, Akira MIYAUCHI1

1隈病院外科, 2隈病院内科, 3隈病院臨床検査科

1Department of Surgery, Kuma Hospial, 2Department of Internal Medicine, Kuma Hospial, 3Department of Clinical Examination, Kuma Hospial

キーワード :

【背景目的】
嚢胞は甲状腺の超音波検査で比較的頻繁に見られる所見で,純粋な甲状腺嚢胞には病的な意義はなく,超音波検査で確実に嚢胞と診断できれば放置しておいても問題ない.しかし,嚢胞内に突出する充実性病変がある場合には嚢胞内突起甲状腺乳頭癌の可能性がある.超音波検査で強く悪性を疑う場合には細胞診結果が悪性を示さなくても注意深く診断を確定する必要があると考えられるが,今回,嚢胞内突起甲状腺乳頭癌様の超音波所見を呈し,診断に難渋した症例を経験したので報告する.
【症例 現病歴】
27歳女性.主訴は頚部腫瘤.10年ほど前に他院で結節性甲状腺腫を指摘され半年毎の定期検査で経過観察を指示されていたが徐々に受診しなくなりそのまま放置していた.家人に勧められ精査目的に当院受診.
【検査結果】
血液検査結果は甲状腺機能正常,Tg: 66.2μg/ml(0-35μg/ml) TgAb: 647.4 unit/ml (0-39.9 unit/ml),ほか特記すべき異常を認めず.超音波検査では直径75㎜の嚢胞を認め,嚢胞内腔に茎を持って突出する辺縁不整,内部エコー粗雑で微細高エコー輝点を伴う充実性病変があり嚢胞内突起甲状腺乳頭癌を疑った.頚部リンパ節腫大は認めなかった.穿刺吸引細胞診を計3回施行したが全て Class II 良性であった.
【手術所見】
超音波検査で強く甲状腺乳頭癌を疑う所見であったため甲状腺右葉切除と念のため中央区域郭清を施行した.肉眼的に嚢胞の外見は明らかな異常を認めずリンパ節腫大などの悪性を疑わせる所見は認めなかった.
【組織所見】
腫瘍部分は大小の濾胞構造が見られ腺腫様甲状腺腫の所見だった.念のため郭清された中央区域のリンパ節に乳頭癌の核所見を有する転移が認められた.切除された甲状腺右葉を注意深く検索したがほかに原発巣と考えられる乳頭癌を確認できなかった.
【結語】
嚢胞内突起甲状腺乳頭癌様の超音波所見を呈し,診断に難渋した症例を経験した.