Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般ポスター
体表:乳腺・甲状腺・表在・その他

(S523)

軟部組織に転移した悪性葉状腫瘍の超音波所見について

Ultrasonographic Findings of Subcutaneous Metastatic Lesions from Malignant Phyllodes Tumor

櫻井 健一, 榎本 克久, 小倉 道一, 谷 眞弓, 天野 定雄

Kenichi SAKRUAI, Katsuhisa ENOMOTO, Michitaka OGURA, Mayumi TANI, Sadao AMANO

日本大学外科学系乳腺内分泌外科分野

Breast and Endocrine Surgery, Nihon University

キーワード :

乳腺に発生する悪性葉状腫瘍は悪性乳腺腫瘍の0.4%程度とされ,まれな疾患である.悪性葉状腫瘍の遠隔転移は10%程度に認められ,主に肺,骨,脳への血行性転移が認められる.軟部組織にも転移する症例も認めるが,その頻度は低く,転移巣の超音波像を見ることは稀である.我々は右前腕部,左大腿部への悪性葉状腫瘍軟部組織転移を経験し,超音波検査による特徴について報告する.
症例は55歳,女性.54歳時に左乳腺悪性葉状腫瘍の診断で,胸筋温存乳房切除術と同側腋窩リンパ節郭清術を受けている.病理組織所見では,切除断端は陰性,腋窩リンパ節転移も陰性であった.経過観察中に右前腕部,左大腿部に腫瘤を認めた.軟部組織の超音波検査では,前腕部,大腿部ともに比較的境界明瞭で平滑な楕円形,分葉形の低エコー腫瘤として描出された.後方エコーはやや増強していた.内部に嚢胞成分は認めなかったが,繊維成分による索状構造が認められた.前腕部,大腿部ともに後方の筋膜への浸潤像は認めなかった. Core needle biopsyを施行したところ,病理組織診断で悪性葉状腫瘍の転移であることが判明した.全身検索の結果,それ以外にも左肩軟部組織,肺,腹腔内リンパ節にも転移が認められた.局所コントロ-ル目的に左大腿部腫瘤の摘出術を施行した.その後全身化学療法としてIfosfamideによる化学療法を施行した.また,右前腕部の腫瘍に対してtotal 60Gyの放射線治療を行った.全身化学療法と局所放射線治療により,一時的にPRを得たが9ヶ月後に病勢が悪化して永眠された.
悪性葉状腫瘍は軟部組織への転移巣においても,性状の形質はあまり変化しておらず,乳腺における葉状腫瘍の超音波検査上の特徴がよく保存されているものと考えられた.軟部組織の腫瘍を主訴に初診された患者さんに対し,乳腺葉状腫瘍の既往を聞くことや体表超音波検査を施行することは重要であると思われた.