Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般ポスター
産婦人科:胎児診断

(S518)

当院における胎児スクリーニングの現状について

Fetal echo screening in Urasoe sogo hospital

島袋 史

Fumi SHIMABUKURO

浦添総合病院産婦人科

OBGY, Urasoe sogo hospital

キーワード :

【目的】
周産期医療においては産婦人科医師不足・産婦人科閉鎖・医事紛争等深刻な社会問題がおきている.そうした現状の中,胎児超音波検査は妊婦検診の日常検査で多忙な産婦人科医によって施行されており,十分な時間がとられているとはいえない.当院では産婦人科医の指導のもと,臨床検査技師と連携して胎児超音波検査に取り組んでいる.そこで,胎児エコースクリーニングによって,新生児期に緊急搬送を要する異常を検出可能か検証するため,胎児エコースクリーニングの状況と最近1年間で胎児エコースクリーニングによって異常がみつかり紹介になった児の経過と新生児搬送例の有無を調査した.
【対象】
2008年11月から2009年10月の12ヶ月間に当院で胎児エコースクリーニングを行い,胎児異常が疑われて紹介となった症例,またはこの期間の分娩で生後に異常を認めて紹介となった例.対象期間の分娩件数は348件であった.主としてローリスク分娩を取り扱い,NICUが併設されていないため,ハイリスク例は高次医療施設へ紹介している.当院は救急医療を行っている総合病院であり,産婦人科病棟は19床の混合病棟となっている.月平均分娩件数は30件である.
【胎児エコースクリーニングの取り組み方法】
①2005年12月より産婦人科の超音波機器の新規導入:Voluson730(GE 社製)②2006年1月より胎児超音波外来の新設 週1回の午後30分枠で6名の予約検査③生理検査で心臓および腹部超音波検査に従事している6名の女性臨床検査技師が1名ずつ当番制で胎児超音波検査へ派遣される④産婦人科医が検査技師へマンツーマン実技指導⑤胎児エコースクリーニングに関する勉強会実施⑥胎児チェック項目シートを作成し検査施行
【胎児超音波検査内容】
妊娠中期(22週)以降の妊産婦を対象としたスクリーニング検査で胎児発育・胎児形態異常の有無を評価することが目的である.●胎児計測●頭頚部の観察 ●胸部(心臓を含む)の観察●腹部の観察●四肢の観察 ●胎盤や臍帯の観察●羊水量のチェック●4D画像作成●希望する妊産婦にビデオ録画を行う●異常が疑われた症例は,産婦人科医と一緒に確認する.
【検査実績】
胎児超音波検査において,検査手技の研鑚と知識の修得が必要不可欠ではあるが,胎児超音波検査チェックシートを用いたため,複数の技師が統一した基準で検査が行う事ができ,見逃しがないように努めることができた.
【結果】
胎児異常による紹介13例,新生児期に異常を認めての紹介は4例みられた.生後に異常を認めた症例は退院後に外来での紹介であり,新生児期の緊急搬送は要さなかった.胎児期紹介例の内訳は,心奇形疑い3例,心臓腫瘍疑い1例,胎児不整脈疑い3例,IUGR疑い3例,口唇口蓋裂1例,横隔膜ヘルニア1例,羊水過少症1例であり,新生児期紹介例は,不整脈2例,VSD1例,口蓋裂1例であった.
【結論】
胎児超音波検査を臨床検査技師と連携して行うことで,多忙な産婦人科医だけで行うよりもより精密な検査を行うことができ,重篤な疾患を見逃すことがないように胎児エコースクリーニングが行われたと思われる.当院はNICUを併設しない施設であり,新生児緊急搬送は児への負担となると考えられるため,特に重篤な疾患を見逃さないように細心の注意を払って検査を行っている.今回の調査期間では胎児超音波スクリーニング検査の成果として新生児期の緊急搬送を必要とする異常の見逃しがなった.