Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般ポスター
産婦人科:婦人科

(S517)

子宮頸部嚢胞性病変の画像診断

Imaging studies of multi-cystic lesion on uterine cervix

山崎 健太郎, 東島 愛, 三浦 清徳, 三浦 生子, 増崎 雅子, 中山 大介, 吉村 秀一郎, 増崎 英明

Kentaro YAMASAKI, Ai HIGASHIJIMA, Kiyonori MIURA, Shoko MIURA, Masako MASUZAKI, Daisuke NAKAYAMA, Shuichiro YOSHIMURA, Hideaki MASUZAKI

長崎大学病院産婦人科

Obstetrics and Gynecology, Nagasaki University Hospital

キーワード :

【目的】
経腟超音波検査を行うと,子宮頸部に多発する嚢胞性病変を認める事がしばしばある.このような像を認めた場合,鑑別疾患として,ナボット嚢胞の多発や,最近,疾患概念として定着しつつある,LEGH(lobular endocervical glandular hyperplasia)などの良性疾患が考えられる.しかし,最近増加傾向にある子宮頸部腺癌が存在する場合や,その特殊型であるMDA(minimal deviation adenocarcinoma)などの悪性疾患である可能性も否定できない.そこで,当院で診断に苦慮した例を提示し,子宮頸部嚢胞性病変の診断における画像診断の役割について検討した.
【症例】
症例1は49歳,2経妊0経産の女性で,人間ドッグで子宮頸部にcystic lesionを指摘され当科へ紹介された.当科の経腟超音波検査で子宮頸部に多発する嚢胞を認めた.細胞診はclassIII,生検でchronic cervicitisを認め,以後外来でフォローされていた.その後も細胞診異常が続いたため,MRIを撮影しMDAも否定できない所見を認めたため,子宮頸部円錐切除術目的のため入院した.円錐切除組織の病理診断はナボット嚢胞であったが,その半年後に再び子宮頸部の嚢胞の拡大を認めたため,単純子宮全摘出術を行い,最終的にはLEGHと診断された.症例2は38歳,0経妊0経産の女性,Peutz Jerghers症候群と診断されていた.子宮頸部細胞診がclassIIIのため当科に精査目的で紹介された.超音波検査では子宮頸部の多発嚢胞像を認め,子宮頸部円錐切除術を行った.切除組織の病理診断はLEGHであった.症例3は40歳,1経妊1経産の女性.人間ドッグで子宮筋腫を指摘され,当科に精査目的で紹介された.細胞診はclassIであった.子宮頸部円錐切除術を行ったところ,組織診断はLEGHであった.症例4は54歳,1経妊1経産の女性.近医で子宮筋腫と診断されて,精査目的のため当科に紹介された.子宮頸部細胞診は日母分類のクラスIIIaで,MRIで子宮頸部の多発嚢胞を認めた.子宮筋腫のため単純子宮摘出術を行った.組織診断はナボット嚢胞であった.症例5は44歳,2経妊1経産の女性.子宮頸癌検診目的で近医を受診し,多量の帯下と経腟超音波検査で子宮頸部多発嚢胞を指摘され,当科に紹介された.子宮頸部細胞診はclassIVで,MDAを疑われ,子宮頸部円錐切除術を行った.しかし,1回目の円錐切除術では病変がとりきれず,2回目により深く子宮頸部を切除することで,MDAと診断された.最終的には広汎子宮全摘出術が行われた.症例6は41歳,3経妊3経産の女性で子宮頸癌検診で日母分類クラスIIIbの異常を指摘され,当科に紹介された.当科での細胞診でもclassⅤの異常を指摘され,子宮頸部円錐切除術を施行した.その結果,MDAと診断され広汎子宮全摘出術が行われた.広汎術後の化学療法施行中に骨盤内再発を来たし,術後3年5ヶ月で死亡した.
【考察】
いずれも経腟超音波とMRI検査を行っているが,画像検査では,ナボット嚢胞,LEGH,MDAの鑑別は難しかった.しかし,精査のきっかけになった理由としては,子宮頸部細胞診の異常に次いで,経腟超音波検査での子宮頸部多発嚢胞を認めることであり,子宮頸部腺癌が増加している現状では,細胞診だけでなく,超音波検査やヒトパピローマウイルス検査なども検診として必要であろう.