Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般ポスター
産婦人科:母体合併症

(S516)

遺残胎盤と胎盤内血流についての検討

The ultrasonograhic evaluation for blood flow in retension of the placenta

高橋 弘幸, 辰村 正人

Hiroyuki TAKAHASHI, Masato TATSUMURA

綜合病院山口赤十字病院産婦人科

Obstetricus and Gynecology, Yamaguchi Redcross Hospital

キーワード :

【はじめに】
最近,我々は,3例の胎盤遺残を経験し,それぞれ異なる経過をとったので,遺残胎盤の血流所見と合わせて報告する.
【症例1】
42歳,近医で前回帝王切開のため37週2日に選択帝王切開を施行.産後1ヶ月健診で子宮内容排出不良と診断され,術後48日目に子宮内容除去術を施行されたが,経腟超音波所見に変化が無かったので癒着胎盤を疑われ,当院へ紹介となった.子宮内に高輝度のmass像を認めたが,massに流入する血流は認めず,出血のリスクは少ないと考え,再度子宮内容除去を試みた.出血は無かったが,子宮後壁が穿孔してしまったため,単純子宮全摘を施行した.胎盤はほとんど壊死していた.
【症例2】
35歳,39週1日,近医で経腟分娩後,血圧低下,背部・肛門部痛のため血腫を疑われ,当院へ緊急搬送となる.緊急MRI施行するも血腫は否定的であった.産後3日目に経腟エコーを施行したところ高輝度mass像を認め,胎盤遺残を疑った.8日目に子宮内容除去術を試み,胎盤組織を一部排出したが,出血が多量となり除去は困難であった.血流を検査すると子宮から遺残胎盤内に流入する多数の血流を認め,胎盤内に拍動する血管も認められたので,16日目,子宮動脈塞栓術(UAE)を施行した.UAE後の造影検査では胎盤内への血流は消失したとのことであったが,経腟カラードプラ検査では施行前とあまり変化が無かったので27日目,一時退院,外来経過観察とした.外来で1週間おきに観察したが,依然として胎盤内に流入する血流を認めていた.57日目,多量の性器出血のため受診されたところ遺残胎盤が自然排出していた.
【症例3】
36歳,41週2日,羊水過多・胎児脳室拡大を認め,分娩誘発により3476gの男児を経腟分娩された.産後1か月健診で子宮内に高輝度mass像を認め胎盤遺残と診断した.胎盤内への血流を認めたので出血のリスクが大きいと考え,UAE後の子宮内容除去を勧めたが,UAEは拒否され,はじめから子宮全摘を希望された.術前のエコー検査で,胎盤に流入する血流が減少しているように考えられたので,全身麻酔下に胎盤除去を試みた.その結果,多量の出血を伴わず胎盤を排出することが出来た.
【考察】
胎盤遺残の場合,多量の出血により出血性shockとなる危険性があり,最近はUAE後に除去術を実施されることが多くなっている.今回は3例のみではあるが,遺残胎盤内の血流や胎盤に流入する血流を評価することにより,出血のリスクをある程度,予測することができるのではないかと考えられた.