Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般ポスター
産婦人科:母体合併症

(S514)

超音波による前置癒着胎盤の診断精度

Diagnosis of placenta previa accreta by ultrasonography

大西 庸子

Yoko ONISHI

北里大学病院総合周産期母子医療センター産科

Obstetric, Center of Perinatal Medicine,Kitasato University School of Medicine

キーワード :

【目的】
前置癒着胎盤の超音波診断精度と超音波所見に基づく管理方法の有用性について前方視的に検討する.
【方法】
前置胎盤を超音波所見によりレベル分類した.子宮筋層の菲薄化,子宮膀胱壁間の豊富な血流,placental lacunae,sonolucent zoneの消失すべての所見を認めず,癒着胎盤の可能性がない場合がレベルⅠで,妊娠37週に帝王切開とする.4つの所見すべてを認め癒着胎盤の可能性が高い場合がレベルⅢである.自己血貯血やステロイド投与を行ない,子宮収縮抑制を図って新生児リスクがほぼ回避できる34週頃まで妊娠を継続する.術前に尿管ステント,内腸骨動脈にocclusion balloonを留置し,胎盤を避けて子宮切開後児を娩出,切開創を縫合して,経カテーテル動脈塞栓(TAE)やballoon occlusionにより出血をコントロールしつつ膀胱を剥離し,子宮摘出を行う.レベルⅡは超音波所見から癒着胎盤の可能性が否定できない場合で,Aラインを確保してから帝王切開を行い,開腹所見によりレベルⅢに準じていく.この管理指針を用いて2007年1月より2008年12月までの前置胎盤を前方視的に検討した.
【成績】
レベルⅠは47例で,癒着胎盤は3例であった.レベルⅡは5例で,癒着胎盤は2例あり,2例ともplacenta lacunaeを認めた.癒着胎盤でなかった1例にplacenta lacunaeを認め,他の2例に子宮筋層の菲薄化を認めた.MRIでは全例に子宮筋層の菲薄化を認めた.レベルⅢは5例すべて癒着胎盤で,MRIでは全例に子宮筋層の菲薄化を認めた.レベル分類による癒着胎盤の診断精度は,感度70%,特異度94%,PPV70%,NPV94%であった.前壁付着(感度80%,特異度88%)は,後壁付着(感度60%,特異度95%)よりも診断精度は高かった.最も感度が高かった所見はplacental lacunaeで63%,子宮膀胱壁間の豊富な血流,sonolucent zoneの消失は特異度が100%であった.4つの所見を組み合わせても,感度は向上しなかった.また,MRIでは超音波検査以上の所見を得ることは出来なかった.術中平均出血量はレベルⅠ,Ⅱ,Ⅲそれぞれ1091,1093,1461mlであり,レベル別の術前管理により各レベル間の出血量に有意差を認めなかった.
【結論】
癒着胎盤の術前診断には限界があるが,子宮筋層菲薄化,子宮膀胱壁間の豊富な血流,placental lacunaeなどの所見は癒着胎盤の可能性を強く示唆する所見であると思われる.また,癒着胎盤の可能性が高い前置胎盤(レベルⅢ)では,TAEやballoon occlusionにより出血コントロールしつつ一期的に子宮摘出を行うことができた.