Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般ポスター
消化器:その他

(S509)

著明な移動を示した病変について

Marked sliding or rotating lesions in abdominal US

伊藤 恵子1, 高橋 豊1, 須田 亜衣子1, 五十嵐 潔2, 石田 秀明3, 小松田 智也3, 渡部 多佳子3, 長沼 裕子4, 大山 葉子5

Keiko ITO1, Yutaka TAKAHASHI1, Aiko SUDA1, Kiyoshi IGARASHI2, Hideaki ISHIDA3, Tomoya KOMATSUDA3, Takako WATANABE3, Hiroko NAGANUMA4, Yoko OHYAMA5

1仙北組合総合病院臨床検査科, 2仙北組合総合病院消化器科, 3秋田赤十字病院超音波センター, 4市立横手病院内科, 5秋田組合総合病院臨床検査科

1Medical Laboratory, Seboku Kumiai General Hospital, 2Gastroenterology, Seboku Kumiai General Hospital, 3Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, 4Internal Medicine, Yokote Municipal Hospital, 5Medical Laboratory, Akita Kumiai General Hospital

キーワード :

【はじめに】
超音波検査の最大の利点は優れた時間分解能である.今回我々は,超音波検査で腹部を観察中に,a)病変部の位置が大きく移動した例,b)病変が回転などの大きな動きを示した例,を検討し若干の知見を得たので報告する.
使用診断装置:東芝社製AplioXG, AplioXV, XarioXG, 日立社製EUB8500.
【対象と方法】
過去5年間で当院と関連病院で経験した約15万件の腹部超音波検査のうち上記の所見を呈した5例について検討をした.
【結果】
5例は,a)肝硬変に伴う左側胆嚢(1例),b)腹腔遊離体(腹腔ねずみ)(2例),c)胃GIST(2例)で,各群中の頻度は,a)1/9(11%),b)2/2(100%),c)2/28(7.1%)であった.移動時に自覚症状はなかった.なお,それらの移動パターンは下記のようであった.a)肝硬変に伴う左側胆嚢:73歳男性.C型肝硬変の他門脈血栓によると思われる左葉外側区の著明な萎縮あり.超音波検査は3ヶ月に一度試行.1/12回とわずかであったが,通常萎縮左葉-胃間に存在する胆嚢が肝右葉(S5)に接する箇所に大きく移動し,次いで,以前の位置にまた戻った.b)腹腔遊離体:共に男性(65,78歳).共に一過性の腹部不快感で試行したスクリーニングの超音波検査で,腹腔内に,3-4cm大の低エコー腫瘤が認められた.腫瘤は共に1)中心に約1cmの高エコー部を有する,2)同心円状の構造を示す円形腫瘤で,3)外側に幅広い無エコー帯(深部になるに従い広がる外側陰影),と,4)顕著な後方音響陰影を伴った.腫瘤は共に下腹部に存在したが,プローブによる圧迫で左下腹部から右腎下極近傍まで移動した.c)胃GIST:共に女性(74歳,76歳).一例は,胃体下部から内腔に伸び呼吸に伴い大きく(数cmにわたって)平行移動した.他例は前庭部由来のもので,呼吸に伴い回転を示した.共に造影超音波上血流豊富なものであった.
【まとめと考察】
呼吸や心拍動の影響で腹腔内臓器や病変がわずかに移動することはよく知られている.しかし今回提示したような大きな移動はまれである.超音波は,CT,MRに比し観察される視野の制限などの欠点があるが,時間分解能が極めて優れているため,心血管系の動的観察に適している.腹部に関しては,ドプラ検査や造影検査を除くと,この動的観察は診断に十分に組み込まれておらず,Bモード所見の記に関しても,病変部の径と,エコー輝度,内部構造と後方エコーの状態,が中心で,動的所見に関しては,今後判定基準なども含め大いに検討活用されるべきと思われる.