Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般ポスター
消化器:消化管

(S508)

黄色肉芽腫性炎虫垂炎の一例

A CASE OF XANTHOGRANULOMATOUS APPENDICTIS

中村 滋

Shigeru NAKAMURA

長吉総合病院臨床検査科

Clinical Laboratory, Nagayoshi General Hospital

キーワード :

症例は30才代男性.主訴はおよそ2週間前よりの右下腹部痛.発熱は無し.同日施行のCTでは,明らかな虫垂腫大なく,血液データ上の炎症反応も軽度(WBC:9300, Neut.69.7, CRP: 0.16)で,明らかな急性虫垂炎肯定し得ず経過観察となった.エコーは急性虫垂炎疑いにて翌日実施.超音波上,肝胆膵に所見認めないが,虫垂は軽度腫大し先端は嚢状に拡張,周囲にはabscessをも含めた液体貯留が示唆された.一方,虫垂の中枢側には,憩室様の突出像が多数見られた.腹水は,虫垂周辺にのみ極微量認められ,さらにその周辺には,大網の集積を思わしめる高エコー層が厚く描出された.そのため超音波上は,虫垂先端における穿孔を伴う重症の急性虫垂炎と診断された.ところが,その後の炎症反応も,初診時よりもむしろ低下し,理学所見もむしろ乏しく,臨床所見との解離が認められた.そのため,後日外科入院となりとなり,手術は入院1週間後に実施された.手術所見では,虫垂先端が母指頭大に腫大,後腹膜・回腸漿膜と癒着しており,内部に粘液貯留が見られた.そのため,肉眼的には虫垂粘液嚢胞腺腫と診断され手術が終了した.しかしながら,切除標本の病理組織学的所見では,虫垂の炎症は,固有筋層を超え漿膜下に達し繊維化を伴う慢性炎症で,組織間隙に流出した粘液を貪食した泡沫状の組織球が認められ,周囲には形質細胞・リンパ球の浸潤を伴う慢性炎症を呈しており,Chronic xanthogranulomatous appendicitis, associated with ruptured mucocele and foci of diverticulitisと診断された.振り返れば,初診時の超音波像は手術時の肉眼所見に極めて正確に合致するが,理学的所見との解離の意味や特異性炎成立の機序が興味深かった.