Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般ポスター
消化器:消化管

(S508)

体外式超音波で診断しえた空腸 Pyogenic Granuloma の1例

A case of Pyogenic Granuloma of the jejunum

岩井 美喜1, 畠 二郎2, 中武 恵子1, 竹之内 陽子1, 谷口 真由美1, 麓 由起子1, 今村 裕志2, 春間 賢3

Miki IWAI1, Jiro HATA2, Keiko NAKATAKE1, Yoko TAKANOUCHI1, Mayumi TANIGUCHI1, Yukiko FUMOTO1, Hirosi IMAMURA2, Ken HARUMA3

1川崎医科大学附属病院中央検査部, 2川崎医科大学検査診断学(内視鏡・超音波), 3川崎医科大学内科学(食道・胃腸)

1Clinical Laboratory, Kawasaki Medical School Hospital, 2Divisoin of Endoscopy and Ultrasound, Department of Clinical pathorlogy and Laboratory Medicine, Kawasaki Medical School, 3Division of Gastroenterology, Depertment of Internal Mdicine, Kawasaki Medical School

キーワード :

【はじめに】
Pyogenic Granulomaは皮膚および粘膜の結合織に由来する隆起性の肉芽腫病変で,後天性の血管腫とされているが,口腔を除く消化管領域に発生したという報告は稀である.体外式超音波で術前診断が可能であった本症の1例を報告する.
【症例】
70歳代男性.17年前より心房細動がありワーファリン内服中.息切れを主訴に他院を受診したところ,高度の鉄欠乏性貧血を指摘され,上・下部内視鏡検査施行するも明らかな出血源が認めらず.小腸の精査目的で当院紹介入院となった.
【入院時所見】
眼瞼結膜に貧血あり.腹部所見に特記すべき異常はなし.RBC 375万 /μl,Hb 7.6 g / dl,Ht 26.6 %,MCV 70.9 fl,Fe 5 μg / dl 未満,フェリチン5.7 ng/dl ,便ヘモグロビン 165.8 ng / ml.他の血液生化学所見に特記すべき異常を認めず.
【カプセル内視鏡所見】
空腸中間位に立ち上がりの急峻な隆起性病変を認めた.表面は上皮が剥奪しており,不整な発赤を伴う浅い潰瘍形成がみられ,同部位が出血源と考えられた.
【体外式超音波所見】
使用機種は東芝社製SSA-700A,プローブは3.75MHzコンベックスおよび7.0MHzリニアである.仰臥位において左上腹部,空腸と思われる部位に,内腔に突出する径約14㎜程度の隆起性病変がみられ,輪郭は比較的平滑,境界は明瞭.内部エコーはほぼ均一な粘膜と同等のエコーレベルであり,小嚢胞状構造が散見された.腫瘍は柔らかく,蠕動により変位がみられた.カラードプラ上,基部より流入し腫瘍全体に豊富なシグナルが描出された.ソナゾイドを用いた造影超音波上では,腫瘍全体に豊富かつ高速な血流が描出された.腫瘍の染影は通常の上皮性腫瘍や粘膜下腫瘍に比較して長く持続した.血管構築はびまん性で一定の傾向はもたなかった.以上から,第1にhemangioma などのAV malformation が疑われた.
【ゾンデ小腸所見】
中部小腸に約12㎜の立ち上がりの比較的急峻な隆起性病変あり.
【手術所見】
トライツ靭帯より2mの空腸に腫瘍を認め,空腸部分切除施行.
【病理組織学的所見】
病変の表層はびらん状で,やや分葉状の形態を呈し,腫瘍内は肉芽様のcapillary の増生が目立ち,間質には浮腫や慢性炎症性細胞浸潤がみられ,Pyogenic Granulomaと診断された.悪性所見はみられなかった.
【臨床経過】
術後経過は良好で,退院後も下血や貧血の出現を認めていない.
【まとめ】
体外式超音波で術前診断が可能であった空腸Pyogenic Granulomaの一例を報告した.本症例では通常の上皮性腫瘍や粘膜下腫瘍との鑑別に造影超音波が有用であった.大量下血例も報告されており,原因不明の消化管出血において頻度は少ないものの本疾患も鑑別診断の対象となり得る.