Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般ポスター
消化器:手法

(S506)

肝癌治療時のナビゲーションツール

Navigaition tool of Ablation for Hepatocellular Carcinoma

小宮山 恭弘

Yasuhiro KOMIYAMA

大阪鉄道病院画像診断センター生理機能検査部門

Clinical Laboratory, Osaka Railway Hospital

キーワード :

【目的】
肝癌のエコー下治療では,腫瘍描出が治療手段や範囲の決定に大きく影響する.腫瘍の描出能を高めるだけでなく,客観的な評価のためには2Dの断層像よりも3Dの方が情報量も多い.このため腹部領域での3Dの超音波用途も,従来の血流評価中心から治療でのNavigaitionに特化した用途へと変わってきている.また最近の肝癌治療ガイドラインでは,1.5cm以上腫瘍を治療適応にすることで,良好な治療予後が得られることが明らかとなり,治療対象となる結節はますます小型化してきている.超音波検査で腫瘍の検索を行う場合,解剖学的にどうしても描出しにくい,見逃しやすい場所(死角)が問題となってくる.また進行肝癌での多結節腫瘍の評価は,CTやMRI画像など他の画像情報と超音波画像との対比に多くの時間が費やされるため,熟練した医師でも時間を要することが多い.今回我々は,臨床で腫瘍描出に時間を要する症例において,GE社製LogicE9に搭載されたGPS機能を用い,腫瘍の描出能についての初期検討を行ったので報告する.
【対象】
肋弓下あるいは,肋間からの2方向から描出が困難な肝腫瘍に対して,GPS Markersを用いて標識を付け,容易に腫瘍描出可能となるかを評価した.また多結節病変について,CT/MRI画像との重ね合わせ画像であるFusion機能を用いて,その腫瘍検出能を検討した.
【方法】
C1-5コンベックスプローブを用いブラケットに2個の位置センサーを装着,トランスミッターを患者の頭側に配置した.また呼吸による影響を最小限にするため,同じ呼吸相での描出を行った.
【結果】
GPS Markers機能を用いることで,他方向からの腫瘍描出が容易となり,短時間での描出が可能であった.またFusion機能では多結節病変において,CT/MRI画像との重ね合わせにより,迅速に客観性のある腫瘍描出が可能であった.
【結語】
GPS Markers機能は,位置センサーからプローブの方向や走査を3D情報にてリアルタイムに計算し,マーキングした位置を常にトラッキングし,表示できる機能である.マーキング位置から離れるとガイドマークが大きく表示され,位置に近づくとドットで表示される.GPS Markers機能を用いることで,直行する他方向断面からの走査でも,関心領域を見逃すことなく検査が行え,穿刺や複数の病変の確認が容易になった.このように2方向から描出が困難な肝腫瘍に対して,あらかじめ標識を付けておくことで,経験の浅い医師や技師でも容易に腫瘍描出可能となるため,検査時間の短縮や描出しにくい場所に存在する腫瘍の描出能向上に役立つ機能と考えられた.また肝癌の診断・治療では,CT画像やMRI画像と超音波画像を総合的に比較することで,治療戦略が練られる.通常はモニターやフィルムの画像と比較が行われるが,特に多発病変でのCTやMRIでの情報をmerkmalとして,短時間での比較が容易であった.現行では腹部領域ではコンベックスプローブでの利用用途に限定されていますが,今後マイクロコンベックスプローブにも用途が広がることで,肝腫瘍描出能の向上のみではなく,超音波下治療戦略の新しいツールとして期待されると考えられた.