Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般ポスター
消化器:腫瘍・症例

(S504)

小隆起を伴った巨大脾嚢胞の1例

Large splenic cyst with small nodular lesion

貝瀬 智子, 斎藤 明子, 米田 有紀, 高山 敬子, 春山 航一, 千葉 三千代, 白鳥 敬子, 山本 雅一

Tomoko KAISE, Akiko SAITO, Yuki YONEDA, Keiko TAKAYAMA, Koichi HARUYAMA, Michiyo CHIBA, Keiko SHIRATORI, Masakazu YAMAMOTO

東京女子医科大学消化器病センター

Institute of Gastroentelorogy, Tokyo Women’s Medical University

キーワード :

巨大肝嚢胞にて血清CA19-9の上昇を示す症例は認めるが,脾嚢胞での報告は少ない.今回我々は,嚢胞内に隆起性病変を認め,腫瘍マーカーも高値を示したため,切除術を施行した脾嚢胞例を経験したので,超音波所見を中心に報告する.
【症例】
36歳男性.
【既往歴】
2001年右気胸にて手術,2003年右気胸再発にて胸腔ドレナージ施行.
【家族歴】
特記すべきことなし.
【嗜好】
喫煙15本/日,機会飲酒.
【現病歴】
2009年3月人間ドックにて脾臓に異常所見を指摘され,当科に精査目的で入院となった.
【入院時所見】
腹部に特記すべき所見なし.血液検査で肝・胆道系酵素に異常なく,腫瘍マーカーではCA19-9のみ155 U/mlと異常値を示した.腹部超音波検査:脾上極に9cm大の嚢胞性病変あり.境界部は高エコーで明瞭.壁の肥厚は認めず,内側に約1.5cmの実質像を呈する結節部とその周囲に淡い高エコーを呈する境界不明瞭でやや不整形の領域が描出された.その他の部分は無エコーであった.造影エコー検査:動脈相で小結節部にわずかな流入血管を認めたが,小結節自体の染影像は認めなかった.経時変化で,淡い高エコー部分のエコーレベルがやや上昇したようにみえた.腹部CT:脾内に10cm大の辺縁に石灰化を伴う単房性嚢胞病変を認め,一部隆起性病変を認めた.MRI:辺縁low,内部はT1 high,T2 highを呈し,嚢胞内部は血腫が考えられた.
【入院後経過】
嚢胞内の隆起部の存在と血清CA19-9 高値で悪性疾患を完全に否定できず,また大きな脾嚢胞であり破裂の危険性も考えられたため,脾摘出術を施行した.切除標本:嚢胞の大きさは100x90x70 mm.内容物は茶褐色であり,内容液のCA19-9は 209500 U/ml,CEA 25.5 U/ml,CA125 957 U/mlと高値,細胞診はClass Ⅱであった.病理組織:Splenic epithelial cyst.嚢胞内面の一部は1〜2層の扁平〜立方状の細胞で被覆され,主に線維性結合組織であり,組織球の浸潤や石灰化を伴っていた.内腔には出血を認めた.CA19-9免疫染色陽性であったが,悪性像は認めなかった.
病理組織所見より,超音波検査で認められた小結節部は線維性結合組織であり,その周囲の淡い高エコーは出血による像,造影エコーにて高エコー部分のエコーレベルがやや上昇したように見えたのは,Gainの調整によるものと考えられた.手術後には,血清CA19-9は正常化した.