Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般ポスター
消化器:腫瘍・症例

(S502)

副腎皮質癌の一例

A Case of Adrenocortical carcinoma

馬場 昭好1, 近江園 善一2, 横井 健太郎2, 大内 一孝3, 小野 滋4, 土屋 邦彦3, 家原 知子3, 細井 創3, 岩井 直躬4

Akiyoshi BANBA1, Yoshikazu OHMIZONO2, Kentarou YOKOI2, Kazutaka OHUCHI3, Shigeru ONO4, Kunihiko TSUCHIYA3, Tomoko IEHARA3, Hajime HOSOI3, Naomi IWAI4

1医療法人社団石鎚会田辺中央病院臨床検査科, 2医療法人社団石鎚会田辺中央病院小児科, 3京都府立医科大学附属病院小児科, 4京都府立医科大学附属病院小児外科

1Department of Clinical Laboratory, Medical corporate group. Sekitetsukai Tanabe Central Hospital, 2Department of Pediatrics, Medical corporate group. Sekitetsukai Tanabe Central Hospital, 3Department of Pediatrics, University Hospital. Kyoto Prefectural University Medicine, 4Department of Pediatric Surgery, University Hospital. Kyoto Prefectural University Medicine

キーワード :

【はじめに】
副腎皮質癌は非常にまれな腫瘍であり,全悪性腫瘍の0.02%程度といわれている.今回我々は腹痛を主訴とし,腹部超音波検査にて左副腎腫瘍を指摘,その後の精査にて副腎皮質癌と診断された一例を経験したので報告する.
【症例】
3歳・女児,身長102.8cm,体重15.0kg(主訴)左側腹部痛・発熱(既往歴)特になし(家族歴)特記事項なし(現病歴)平成21年5月に激しい左側腹部痛を自覚し近医を受診.腹部レントゲンにて便塊像著明だったため浣腸を施行するも症状改善せず.また血液検査にてCRP 7.9mg/dlと高値であったため,当院紹介受診となった.(現症)体温37.7℃,血圧100/58mmHg,HR126/min,結膜貧血なし,黄疸なし,咽頭発赤なし,頸部リンパ節触知せず,胸部呼吸音清・雑音なし,心音整・雑音なし,腹部平坦・軟,左側腹部に圧痛あり,髄膜刺激徴候なし,皮膚発疹なし(血液データ)白血球21400/μl,赤血球470万/μl,ヘモグロビン12.2g/dl,血小板25.4万/μl,LDH 2280mg/dl,CRP 8.86mg/dl(腹部レントゲン)腸内ガス(++),二ボー(-)
【超音波検査】
痛みの部位である左側腹部・左腎上部に境界明瞭な腫瘤を認めた.sizeは3.9cm×2.5cm.腫瘤は被膜を有し内部エコーはlow〜highと不均一.周囲組織への浸潤像は認めず,また腫瘤内のcolor signalは認めなかった.その他腹水も認めた.
【腹部造影CT】
左副腎にmassを認める.膵・脾・左腎とは離れている.massの造影効果は乏しく,内部には出血を示唆するhigh density(+).周囲後腹膜にも出血を認める.s/o 神経芽細胞腫.
【腹部MRI】
副腎由来と思われる約6cm大の粗大なmass(+),内部の出血(+),周囲にも出血を疑う.s/o 神経芽細胞腫,s/o褐色細胞腫.
【経過】
造影CT,MRIの結果,悪性左副腎腫瘍の可能性があると考え精査・加療目的で京都府立医科大学に転院.各種精査が行われ,副腎皮質腫瘍が最も疑われた.その後小児外科にて腫瘍全摘出術を行い,病理診断にて中心部に広い出血壊死を伴う副腎皮質癌と確診された.術中所見では腫瘍の破裂は認められなかった.
【考察】
副腎腫瘍の場合,病変の大きさは鑑別において重要であり5cm以上であれば悪性を疑う.また多くの例において副腎癌は内部の出血壊死を伴うとされる.今回超音波検査上,腫瘍は左季肋部からのapproachでは描出されず,左側腹部からのapproachのみでの描出であったため,sizeは過小評価となった.また内部の不均一なエコー像は出血壊死を反映したものと推測された.腹痛の原因としては,明らかな腫瘍の破裂部位が認められなかったことから,内部壊死に伴う腫瘍容積増加による被膜の伸張が原因であると考えられた.
【まとめ】
副腎腫瘍は多彩な形態をとり,画像診断のみでの診断には限界がある.腫瘍の鑑別には内分泌機能などの検査も必要となってくるが,特に今回のように小児症例の場合,超音波検査は被爆の問題もなくくり返し検査出来るという利点があり,腫瘍診断法の第一選択として有用であった.