Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般ポスター
消化器:胆膵

(S501)

腎細胞癌の膵転移

Pancreatic metastasis from renal cell carcinoma

大橋 泰弘1, 阿部 香代子1, 木村 富貴子1, 岩 薫子1, 佐竹 真希子1, 鈴木 美里1, 長谷部 幸恵1, 加藤 優1, 石田 秀明2

Yasuhiro OOHASHI1, Kayoko ABE1, Hukiko KIMURA1, Kunko IWA1, Makiko SATAKE1, Misato SUZUKI1, Yukie HASEBE1, Yuu KATOU1, Hideaki ISHIDA2

1石巻赤十字病院検査部, 2秋田赤十字病院超音波センター

1Department of Laboratory Medicine, Ishinomaki Red Cross Hospital, 2Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital

キーワード :

【はじめに】
比較的稀な腎細胞癌の膵転移の3例を超音波像を中心に報告する.
【使用機種】
AplioXG, XV(中心周波数:3-4MHz)
【症例1】
50歳台男性.6年前左腎細胞癌で左腎摘出術を受けている.その後年一度のCT検査で経過観察されていた.再発や転移の所見を認めず,5年目からは超音波による年2回のチェックも加えられた.術後6年目に膵尾部に1.5cm大の均一低エコー腫瘤を指摘されるも後方エコーが若干増強しており,ドプラ上血流信号は見られず,膵嚢胞と判断し経過観察とした.半年後の超音波で,病変は形状が角張り,2cm大と径が若干増大し後方エコーの増強も見られなくなった.同時期のCTで同部は早期濃染され腎細胞癌の膵転移が疑われた.他臓器に転移は見られず,手術適応と考えられた.なお各種腫瘍マーカーは陰性であった.膵体尾部切除術施行され病理学的にも腎細胞癌の膵転移が確定した.
【症例2】
50歳台男性.2年前右腎細胞癌で右腎摘出を受けている.無症状であったが軽度肝機能異常の精査目的に当科受診.生化学データも各種腫瘍マーカーも正常であった.超音波で膵体部に2cm大の均一低エコー腫瘤を指摘された.腫瘤はドプラ上微細血流信号が認められ,造影超音波で早期濃染され腎細胞癌の膵転移が疑われた.腹腔内の他臓器に転移は見られなかったが小肺転移も同時に見つかり,インターフェロン療法が選択された.
【症例3】
70歳台男性.約10年前他院で右腎細胞癌で右腎摘出を受けている.一過性の上腹部痛の精査目的に当科受診.生化学データも各種腫瘍マーカーも正常であった.超音波で膵体部に2cm大の均一低エコー腫瘤を指摘された.腫瘤はドプラ上微細血流信号が認められ,腹腔動脈造影で早期濃染され腎細胞癌の膵転移が疑われた.他院で膵体尾部切除術施行され病理学的にも腎細胞癌の膵転移が確定した.
【まとめと考察】
膵転移は比較的稀な疾患であるが,原発巣としては,肺癌と腎細胞癌が圧倒的に多数を占める.一方,腎細胞癌は腫瘍摘出後長期間経過観察後に(膵を含め)稀な転移箇所に出現すること,などが知られており,孤立性転移をきたすことは稀ではない.そのため外科的に根治が可能な場合も多い.このため,腎細胞癌の既往歴を有する例では膵は詳細に検討すべきである.なお,Bモード上病変部が均一低エコーであるため所見の読影には若干の注意が必要と思われた.