Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般ポスター
消化器:胆膵

(S500)

硬化性胆管炎の一例-超音波所見を中心に

Contrast-enhanced sonographic findings of PSC

野口 篤子1, 高橋 勉1, 石田 秀明2, 長沼 祐子3

Atsuko NOGUCHI1, Tsutomu TAKAHASHI1, Hideaki ISHIDA2, Hiroko NAGANUMA3

1秋田大学大学院医学系研究科医学専攻機能展開医学系小児科学講座, 2秋田赤十字病院超音波センター, 3市立横手病院内科

1Department of Pediatrics, Akita University School of Medicine, 2Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, 3Department of Internal Medicine, Yokote Municipal Hospital

キーワード :

【はじめに】
報告の少ない硬化性胆管炎の造影超音波所見について報告する.
【方法】
使用診断装置:東芝社製:AplioXG(周波数:3-4MHz).なお,造影超音波検査は通常の肝腫瘍のそれに順じ,推奨容量の半量を肘静脈から注入し,MI値0.2-0.3で10分まで観察した.
【症例】
12歳男児 主訴)腹痛,下痢,血便.既往歴)アレルギー性鼻炎.家族歴)特記事項なし現病歴)37℃の微熱,上腹部痛が10日間持続し入院.軽度の炎症反応増加(WBC14500/μl, CRP0.97mg/dl),肝障害(AST75U/l, ALT66U/),胆道系酵素の上昇(GGT435U/l, TB1.8mg/dl, ALP2055U/),IgM上昇(232mg/dl),抗核抗体及びPR3-ANCA陽性を認めた.腹部超音波検査において,肝は若干腫大しているが辺縁や実質パターンは正常で腫瘤性病変は見られなかった.肝内胆管は軽度拡張していた.拡張の程度は肝内のどの部位でもほぼ一様で,内部に結石や腫瘍は見られなかった.胆管壁は1-2mmとび慢性(一様)に肥厚していた.胆嚢は超音波上正常であった.肝外胆管は内腔は6mm程度であったが壁は2-3mmと肥厚していた.腹部に他の異常所見は無かった.胆管壁は,肝内外ともに造影早期から均一に濃染され胆管炎に合致する所見であった.この際のMRCP/CTでは,胆管拡張は軽度で胆道奇形はなく,原発性硬化性胆管炎(PSC)の確定診断には至らなかった.その後利胆剤を開始,肝機能は1ヶ月程で正常化したが引き続き行った肝生検の病理像は硬化性胆管炎(stageIII)の所見であった.胆汁うっ滞,炎症細胞浸潤は軽度で好酸球はほとんどなかった.一方,血清IgG4が137mg/dlと高値だったことからIgG4関連硬化性胆管炎も疑い,IgG4免疫組織染色を行った所,肝のIgG4陽性形質細胞浸潤が僅かに認められた.その後,胆道系酵素の軽度上昇はあるも明らかな炎症や臨床所見の出現はなく経過している.半年後における超音波所見は基本的に不変であったが肝内胆管の拡張が若干軽減した印象を与えた.
【まとめと考察】
現在,造影超音波法は,肝腫瘍の診断に不可欠なものとなっているが胆管系の診断に対する意義は今後の検討課題である.しかし,造影剤注入後,胆管近傍を走行する動脈と門脈を造影することで胆管のみを無エコー管状構造物として明瞭に表示することで,Bモード法やカラードプラ法では把握困難な微細な胆管の異常を拾い上げることが可能となる.胆管壁の血流も造影法以前の超音波検査では判定困難なものであった.今後この様な状態がどう変化するか造影超音波も含めた超音波による経過観察が必要である.