Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般ポスター
消化器:肝腫瘍

(S497)

まだら脂肪肝を伴う血管腫

Irregular fatty liver complicated by hemangioma

幕田 倫子1, 齋藤 沙織1, 渡辺 里美1, 丹治 広彰1, 岡﨑 秀子1, 高野 真2, 大平 弘正3, 石田 秀明4

Michiko MAKUTA1, Saori SAITOU1, Satomi WATANABE1, Hiroaki TANJI1, Hideko OKAZAKI1, Makoto TAKANO2, Hiromasa OHHIRA3, Hideaki ISHIDA4

1大原綜合病院臨床検査部, 2大原綜合病院胃腸科, 3福島県立医科大学内科学第二講座, 4秋田赤十字病院消化器内科

1Clinical Laboratory, Ohara General Hospital, 2Depertment of Gastroenterology, Ohara General Hospital, 3Department of Second Internal Medicine, Fukushima Medical University, 4Department of Gastroenterology, Center for Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital

キーワード :

【はじめに】
今まであまり報告のなかった,まだら脂肪肝を伴う肝血管腫に関し報告する.
使用診断装置:東芝社製:AplioXG, GE社製:Logiq7(周波数:3-4MHz)
【対象と方法】
Bモード上まだら脂肪肝と診断され造影超音波検査で最終的にそのまだら領域の一部に血管腫が認められた4例(男性2例,女性2例,年齢:48-67歳(平均:59歳))を対象に次の検討を行った.
使用診断装置:東芝社製:Aplio XG, XV, GE社:Logiq 7(共に中心周波数3-4MHz)
【方法】
a)まだら領域の部位と形状,b)血管腫の径とシャントの有無,c)まだら領域に占める血管腫の割合.なお,a)はBモード所見から,b)のシャントの有無はカラードプラ所見から,b)の血管腫の径とc)は造影超音波所見から,判定した.
【結果】
a)低エコー部は全て肝右葉で,S6,S7,各1例,S8が2例で,径は最大3X3-6X7cm,全例で境界不規則で,retrospectiveに見直してもまだら脂肪肝以外の診断は不能であった.b)血管腫は全て1個で,径は2X2−3X4cmで,3例(75%)にA-Pシャントが認められた.c)面積比:29-44%と全例まだら領域の半分以下であった.
【まとめと考察】
現在,造影超音波法は,肝腫瘍の診断に不可欠なものとなっており,特にその血管腫の診断能はきわめて高いとされている.今回の検討でも,血管腫の最終診断はこの造影超音波所見を基盤とした.一方腫瘍に伴うA-Pシャントはカラードプラ上動脈と併走する門脈の血流方向が逆転するなどの特徴的な所見を示し,カラードプラ検査の診断能は高い.今回の検討でも,血管腫に伴う動脈−門脈シャントの最終診断はこのカラードプラ所見を基盤とした.さらに,B-モード法の脂肪肝の診断能も高く一般臨床的には,生化学データを合わせ脂肪肝と診断しほとんど問題が無い.脂肪肝では肝内脂肪沈着が不均一に生ずる,いわゆる“まだら脂肪肝”が高頻度で見られることも知られており,まだら脂肪肝では,高エコー領域は脂肪沈着が高度,低エコー部は脂肪沈着が無−軽度であると考えられている.まだら脂肪肝は造影超音波上,高エコー領域−低エコー領域間に造影の程度の差異はほとんどなく,造影超音波上まだら脂肪肝と肝腫瘍の鑑別点となっている.以上の超音波所見を組み合わせ,今回の検討から,A-Pシャントを伴う肝血管腫ではその周囲(主に末梢)の脂肪沈着の程度が不均一になることがありえることが分かった.今後,1)肝血管腫以外の病変でも同様の現象を引き起こすか,2)A-Pシャントにおけるどの様な機序がこの現象を引き起こすか,などの検討が必要と思われる.