Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般ポスター
消化器:肝細胞癌

(S495)

進行肝細胞癌に対するソラフェニブの治療評価におけるパラメトリックイメージの有用性

Parametric imaging using contrast-enhanced ultrasound with Sonazoid for the early evaluation of response to Sorafenib in advanced hepatocellular carcinoma

塩澤 一恵1, 渡邉 学1, 高山 竜司1, 高橋 政義1, 和久井 紀貴1, 永井 英成1, 飯田 和成1, 住野 泰清1, 工藤 岳秀2, 丸山 憲一2

Kazue SHIOZAWA1, Manabu WATANABE1, Ryuji TAKAYAMA1, Masayoshi TAKAHASHI1, Noritaka WAKUI1, Hidenari NAGAI1, Kazunari IIDA1, Yasukiyo SUMINO1, Takehide KUDO2, Kenichi MARUYAMA2

1東邦大学医療センター大森病院消化器内科, 2東邦大学医療センター大森病院臨床生理機能検査部

1Department of Gastroenterology and Hepatology, Toho University Medical Center, Omori Hospital, 2Department of Clinical Laboratory, Toho University Medical Center, Omori Hospital

キーワード :

【はじめに】
これまでわれわれは肝悪性腫瘍の血流動態評価におけるソナゾイド造影超音波(CEUS)によるパラメトリックイメージ(PI)の有用性について報告してきた(日本超音波医学会第82回学術集会など).一方,ソラフェニブは切除不能な進行肝細胞癌(HCC)を適応としたマルチキナーゼ阻害剤で,腫瘍細胞の増殖に関わるシグナル伝達に加え,血管新生に関わるシグナル伝達の両方を阻害することから,HCC治療において大きく期待されている.従来,抗癌剤治療の効果判定にはRECIST基準が用いられてきたが,ソラフェニブのような分子標的薬は腫瘍縮小よりも腫瘍壊死が先に出現するため,その治療効果判定に対しては,腫瘍の血流動態の評価が重要となるのではないかと考えられる.さらに,ソラフェニブの重篤な副作用を考慮すると,早い段階での治療評価が望まれる.
【目的】
進行HCCに対するソラフェニブ投与症例において,ソラフェニブ投与前後でPIを作成し,抗腫瘍効果の評価に対するPIの有用性について検討した.
【方法】
対象はソラフェニブ投与基準を満たす進行HCC症例8例.全例男性,平均年齢67歳,全例Child-pugh A,AFP:29.1〜22516ng/ml(中央値1698),PIVKAⅡ:12〜259000mAU/ml(中央値2585).ソラフェニブ初回投与量は800mgが5例,400mgが3例.各症例において腹部超音波(US)にて経過観察が可能な腫瘍または門脈腫瘍塞栓を選択し,その部位に対しソラフェニブ投与前,投与2週,4週後に同一断面かつ同じ撮像条件でCEUSを施行した.装置は東芝社製AplioXG,3.75MHzコンベックスプローブを用い,ソナゾイド0.5mlを静脈内投与しMI値0.2で血管相(0〜40秒)を動画で保存した.保存した動画に対し,画像解析ソフトCOMMUNEを用いたPIで各腫瘍の解析を行なった.PIの作成方法は,腫瘍近傍の太い動脈または腫瘍と同一断面の腎臓に造影剤が到達した時点を起点とし,赤→橙→黄→緑→水色→青→紺に設定し,造影剤到達時間の差を色彩の相違で経時的に表現した.得られたPIと腫瘍マーカー(AFP,PIVKAⅡ)およびdynamic CTを治療前後で比較した.
【結果】
8例中4例で,治療開始2週または4週後のPIにおいて腫瘍内血流速度は低下し,腫瘍マーカーも減少がみられた.他4例では腫瘍内の血流速度は不変もしくは増加し,腫瘍マーカーも上昇していた.PIにおいて腫瘍内血流速度の低下を認めた4例のうちdynamic CTで評価が可能であった3例では,PRが1例,SDが2例であった.
【結語】
腫瘍内の血流動態を静止画一枚で詳細に把握できるPIは血管新生抑制効果を主とするソラフェニブの抗腫瘍効果を評価できる可能性が示唆された.腫瘍内部の血流動態の評価は,治療開始早期の効果判定につながるのではないかと考えられたが,今回の検討では観察期間も短く,time to progressionやoverall survivalについては言及できず,今後多くの症例を検討する必要があると思われた.