Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般ポスター
循環器:症例2

(S490)

右冠動脈-冠静脈洞瘻の一例

A case of right coronary artery to coronary sinus fistula

新田 江里1, 吉冨 裕之1, 山口 一人1, 福間 麻子1, 石橋 豊2, 安達 和子3, 高橋 伸幸3, 長井 篤1, 田邊 一明3

Eri NITTA1, Hiroyuki YOSHITOMI1, Kazuto YAMAGUCHI1, Asako FUKUMA1, Yutaka ISHIBASHI2, Kazuko ADACHI3, Nobuyuki TAKAHASHI3, Atsushi NAGAI1, Kazuaki TANABE3

1島根大学医学部附属病院検査部, 2島根大学医学部附属病院地域医療教育研修センター, 3島根大学医学部附属病院循環器内科

1The Division of Laboratory, Shimane University Hospital, 2Center of Education for Rural Medicine, Shimane University Hospital, 3The Department of Cardiovascular Medicine, Shimane University Hospital

キーワード :

【症例】
30代女性
【現病歴】
2005年3月,侵入奇胎に対する化学療法中,発熱と呼吸困難が出現し,肺炎として治療され軽快.呼吸困難精査のため施行されたベッドサイドでの経胸壁心エコー図検査で異常を指摘されたため,婦人科治療後,2006年3月,精査目的で循環器内科入院.
【経過】
心雑音およびラ音は聴取されず,心電図,胸部X線で異常所見を認めなかった.経胸壁心エコー図検査では,右冠動脈起始部が9mmと著明な拡大を認めた.また,傍胸骨左室短軸像や心尖部四腔像にて,左右後房室間溝と後室間溝の交わる心臓十字(crux)付近に4個の円形構造を認め,その後方には別の小腔を認めた.4個の円形構造内の血流シグナルは,速度,パターンが同様であり,また,右冠動脈#3との連続性から,右冠動脈の遠位部と考えられた.さらに,後方の小腔内には折り返しを呈する加速血流を認め,その血流が右室流入路像にて,冠静脈洞右房流入部に入るのが確認できた.経食道心エコー図検査でも同様に,4個の円形構造の後面に小腔を認め,内部に加速血流を認めた.この血流は冠静脈洞に流入していることが確認され,この小腔は右冠動脈から冠静脈洞へとつながる瘻孔部であると考えられた.以上,心エコー図検査により,右冠動脈-冠静脈洞瘻と診断した.右冠動脈と冠静脈洞の走行を3次元的に把握するために行ったMDCTでは,右冠動脈は全長にわたってびまん性に拡大,蛇行して走行した後,冠静脈洞に開口していた.心臓カテーテル検査を施行したところ,Qp/Qs=1.26であった.冠動脈造影にて,右冠動脈末梢は冠静脈洞に開口し,本来,瘻孔がなければ造影されない右房が造影され,また,冠静脈が逆行性に造影された.左冠動脈には明らかな異常所見は認めず,側副血行路も認めなかった.運動負荷心筋シンチでは虚血性変化を認めなかった.無症状であること,Qp/Qsが大きくないこと,心不全,狭心症など合併症を認めないことなどから,手術やコイル塞栓術などは行わず,経過観察とした.
【結語】
まれな右冠動脈-冠静脈洞瘻の一例を経験した.心エコー図検査により,瘻孔部の短絡血流と右冠動脈拡大が描出され,冠動脈瘻の診断につながった.本症例は,今後も狭心症や心不全症状などの出現に注意しながら経過観察を行う必要があると考えられた.