Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般ポスター
循環器:症例2

(S489)

Klippel-Trenaunay症候群の3例

Three cases of Klippel-Trenaunay syndrome

吉見 登美子1, 佐藤 通洋2, 林 忍3, 宮地 道代1, 村井 涼子1, 小原 崇義1, 三嶋 美穂1, 齊藤 広将1, 横山 一紀1

Tomiko YOSHIMI1, Michihiro SATO2, Shinobu HAYASHI3, Michiyo MIYACHI1, Ryouko MURAI1, Takayoshi KOHARA1, Miho MISHIMA1, Hiromasa SAITO1, Kazunori YOKOYAMA1

1済生会横浜市東部病院臨床検査部, 2済生会横浜市東部病院放射線診断科, 3済生会横浜市東部病院外科

1Department of Clinical Laboratory, Saiseikai Yokohamashi Tobu Hospital, 2Department of Diagnostic Radiology, Saiseikai Yokohamashi Tobu Hospital, 3Department of Surgery, Saiseikai Yokohamashi Tobu Hospital

キーワード :

【はじめに】
稀な混合型血管奇形であるKlippel-Trenaunay症候群の3例を経験したので,下肢静脈の超音波所見を中心に報告する.
【症例1】
35歳,男性.幼少より左下肢の腫脹があり,左殿部から下腿にかけてport-wine stainを認める.左下肢が右下肢より長く,左第2趾が肥大し,著明な静脈瘤を伴っている.US上,左下腿外側の静脈瘤は,拡張した小伏在静脈に連続している.下腿外側から膝外側に太い静脈を2本認め,1本は大腿後面外側を上行して大腿中上部後面で急峻に深部へ向かい,深大腿静脈に流入すると思われる.もう1本は大腿前面に回り,上行して大腿静脈に流入している.
【症例2】
12歳,男性.生下時より両下肢にport-wine stainと静脈瘤を認め,左右の下肢長差がある.右下肢が長く,右第2趾が肥大している.US上,右足背と下腿外側の静脈瘤から連続する太い静脈は,下腿外側から膝外側を上行し,大腿前面に出て大腿静脈に流入している.左側の外側辺縁静脈も同様に大腿前面に回り,大腿静脈に流入している.
【症例3】
48歳,女性.15年前に右下肢静脈瘤の硬化療法を施行した.右下肢にport-wine stainと静脈瘤を認める.US上,右下肢全体に静脈瘤を認め,下腿外側から大腿前面を走行する外側辺縁静脈は大腿静脈に流入している.
【考察】
Klippel-Trenaunay症候群(KTS)は,1900年にフランスの神経内科医KlippelとTrenaunayが最初に報告した症候群である.稀な散発性の複雑奇形で出生時やかなりの早期に認められ,次の3徴があるが,すべてそろうわけではない.① 皮膚の毛細血管性奇形(母斑,port-wine stain),②一肢以上の軟部組織と骨の肥大,③非典型的な静脈瘤.主に毛細血管と静脈,リンパ管成分の混合した脈管奇形で,内臓の血管奇形や,リンパ系の機能異常を伴うこともある.下肢の特徴的な静脈異常は,太い外側辺縁静脈(lateral marginal vein,KT vein)で,多くは深大腿静脈や内腸骨静脈に合流するが,時々,大腿前方を横切り大腿静脈に流入する.同様の臨床所見で動静脈瘻を伴う場合はParkes Weber症候群として区別される.画像診断のポイントは,奇形の型,範囲,重症度の評価と,動静脈シャントが無いことの確認である.USは外側辺縁静脈と静脈瘤および深部静脈系の異常を診断するために行なわれ,静脈血栓の除外や静脈弁不全,穿通枝不全の確認ができる.単純X線写真は,骨の長さを測る目的で撮影され,MRIやMR phlebographyは,放射線被曝なしに筋肉,骨,脂肪,血管組織を区別でき,造影により高画質の血管像を得ることができる.静脈造影は術前検査に有用である.治療には圧迫療法,port-wine stainに対するレーザー治療,硬化療法,外科的治療がある.