Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般ポスター
循環器:弁膜症・その他

(S489)

過去20年間の旭中央病院における心エコーによる心臓腫瘍の検出状況

The evaluation of cardiac tumors diagnosed at Asahi general Hospital for the past 20 years

松本 稔1, 船渡川 勝康1, 高根 晴美1, 島田 三枝1, 藤代 洋子1, 真久 敦子1, 山田 恵1, 神田 順二2

Minoru MATSUMOTO1, Katsuyasu FUNATOGAWA1, Harumi TAKANE1, Mitsue SHIMADA1, Youko FUJISHIRO1, Atsuko MAKU1, Megumi YAMADA1, Junji KANNDA2

1国保旭中央病院中央検査科, 2国保旭中央病院循環器内科

1Clinical Laboratory, Asahi General Hospital, 2Division of Cardiology, Asahi General Hospital

キーワード :

【はじめに】
心臓腫瘍はまれな疾患であるが,心エコー検査で見い出される機会は増加している.今回,我々は過去20年間の当施設で経験した心臓腫瘍症例を発生頻度・種類・発生部位などの観点から検討したので報告する.
【対象】
1990年1月から2009年12月の20年間に当院心電図検査室で心エコー検査を施行した患者80735例(延べ131931例)を対象とした.なお,当院では小児循環器科の患者は心電図検査室で心エコーを行っていないため,対象外とした.
【結果】
心エコー検査を施行した患者80735例中,心臓腫瘍と診断されたのは29例で0.04%であった.前半の10年間(1990年〜1999年)で心臓腫瘍と診断されたのは6例,後半(2000年〜2009年)で心臓腫瘍と診断されたのは23例であった.性別は男性14人(47%),女性16人(53%)であり,年齢は34歳〜80歳で平均年齢は65歳であった.29例中,原発性腫瘍が17例(59%),転移性腫瘍が12例(41%)であった.原発性腫瘍17例のうち,粘液腫が15例と原発性腫瘍の88%を占めていた.残りの2例は心膜中皮腫と心臓骨肉腫がそれぞれ1例ずつであった.心電図は2例のみ心房細動を認めた.原発性腫瘍の発生部位としては,左房が13例(76%),右房が2例(12%),左室が1例(6%)心膜が1例(6%)であった.転移性腫瘍12例のうち悪性腫瘍が9例(75%),悪性リンパ腫が3例(25%)であった.悪性腫瘍の内訳は,肝臓癌が2例,肺癌が2例,乳癌・胆管細胞癌・子宮筋肉腫・腎臓癌・悪性黒色腫がそれぞれ1例ずつであった.転移性腫瘍の発生部位としては右房が3例(25%),左房が1例(8%),心膜が2例(17%)IVC〜右房にかけてが4例(33%),多発性が2例(17%)であった.多発性は2例とも悪性リンパ腫によるものであった.
【考察】
心臓腫瘍は剖検例の0.0017%〜0.33%に見られると報告されているが,今回我々が心エコー検査で経験した心臓腫瘍の頻度は全体の0.04%であった.年代別にすると,前半の10年では6件のみであったのに対し,後半の10年では23件と約4倍に増大している.これは,心エコーの件数が増大していることに伴うものと思われるが,心エコー機器の技術向上により,それほど大きくない腫瘍でも,より発見しやすくなっていることも関係していると思われる.原発性腫瘍に関しては,従来の報告どおり,粘液腫が大多数を占めていた.発生部位も76%が左房であった.また,転移性腫瘍は原発性腫瘍の20〜40倍と報告されているが,今回,我々の経験した心臓腫瘍では原発性腫瘍のほうが多い結果となった.これは,転移性腫瘍は剖検により発見されることが多く,悪性腫瘍を有する患者が,生前必ずしも心エコーを施行するわけではない点などから,このような結果になったものと推測された.心臓腫瘍はまれな疾患ではあるが,心エコー検査を施行する際には,その存在を念頭において見落としのないよう,特に癌患者などでは注意深い観察が必要と思われた.