Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般ポスター
循環器:弁膜症・その他

(S487)

3G携帯ネットワークを利用した救急医療のためのリアルタイム超音波画像の伝送

Real-time streaming transmission of ultrasound echography over 3G mobile networks for emergency care and telemedicine

金野 敏1, 西條 芳文1, 2, 熊谷 和敏2, 小池 秀幸2, 吉澤 誠2, 3, 山家 智之1, 2, 仁田 新一1

Satoshi KONNO1, Yoshifumi SAIJO1, 2, Kazutoshi KUMAGAI2, Hideyuki KOIKE2, Makoto YOSHIZAWA2, 3, Tomoyuki YAMBE1, 2, Shin-Ichi NITTA1

1東北大学加齢医学研究所, 2東北大学大学院医工学研究科, 3東北大学サイバーサイエンスセンター

1Institute of Development, Aging and Cancer, Tohoku University, 2Graduate School of Biomedical Engineering, Tohoku University, 3Cyberscience Center, Tohoku University

キーワード :

【目的】
近年,日本におけるブロードバンドの世帯普及率が高まりリアルタイムの動画コミュニケーションが日常的なものになるとともに,これらの技術の救急医療および遠隔医療への応用に期待が高まっている.しかし遠隔医療の対象となるような過疎地域では都市部と比較してブロードバンドの普及が遅れている場合も多く,また屋外の救急医療の現場ではそもそも有線ネットワークの確保が困難であることから,実用化に際しては携帯電話網をはじめとする無線ネットワークの利用が不可欠であると考えられる.最近ではH.264などの新しい圧縮技術により3G携帯ネットワークでもリアルタイムで比較的高画質な動画の伝送が可能になったことから,これらの機器を用いて移動中の車内からリアルタイムに超音波診断装置の映像を伝送した場合の臨床的有用性を検証するため,伝送された超音波画像の画質および伝送ビットレート・フレームレートについての評価をおこなった.
【対象と方法】
本多電子(株)の超音波診断装置HS-2100からのコンポジット映像出力をソニー(株)のリアルタイム映像伝送システムであるロケーションポーターRVT-SD100に入力し,移動中の車内からNTTDocomoのFOMA-3G回線を経由して研究室に設置した受信側のロケーションポーターへ,健常ボランティアの腹部および心臓超音波画像を伝送した.伝送は電波状態の良好な都市部,やや電波状況が悪い郊外,電波が途切れがちになるトンネル内の3つのエリア内でおこない,各エリアにおける受信映像,伝送ビットレートおよびフレームレートを経時的に記録した.また,圧縮に伴う受信映像の画質劣化を評価するため,医療の専門家および非専門家を対象として主観的な評価スケールを用いた画質に関するアンケート調査を実施した.
【結果と考察】
都市部ではほぼ製品仕様どおりの250kbps/15fpsでリアルタイムに超音波画像の伝送が可能であった.画質的にも腹部では出血や腹水貯留などが十分に診断可能なレベルであり,また心臓では時折フレームレートの低下が気になるものの壁運動異常の検出など基本的な心機能評価は十分可能であると考えられた.電波状況が悪い郊外やトンネル内では一時的な画質および伝送ビットレート,フレームレートの低下が認められたが,基地局のあるトンネル内では伝送ビットレートは比較的保たれていることが確認された.以上より,良好な伝送画像を得るためには通信機器の性能や設定だけではなく,事前に移動経路の電波状況を十分に把握して送信側と受信側で伝送場所やプロトコルの取り決めを行うなど,運用面での何らかの工夫が必須条件であると考えられた.
【結論】
電波状況が良好な環境下においては,3G携帯ネットワークを用いた超音波画像の伝送は臨床的に十分有用であり,運用面の整備などをおこなうことで救急医療および災害地における遠隔医療などでも実用に耐えうる可能性が示唆された.