Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般ポスター
循環器:症例1

(S484)

血管超音波検査が経過観察に有用であったICSの一例

Efficiency of serial vascular sonography study after stent implantation for iliac vein〜A case of Iliac Compression Syndrome〜

辻 真一朗1, 中村 茂2, 船津 篤史2, 小林 智子2, 竹内 寿美1, 森 由美子1, 橋本 喜代美1, 青木 由美子1

Shinichiro TSUJI1, Shigeru NAKAMURA2, Atsushi FUNASU2, Tomoko KOBAYASHI2, Hisami TAKEUCHI1, Yumiko MORI1, Kiyomi HASHIMOTO1, Yumiko AOKI1

1京都桂病院検査科, 2京都桂病院心臓血管センター

1Department of Laoratory, Kyoto Katsura Hospital, Kyoto, Japan, 2Cardiovascular Center, Kyoto Katsura Hospital, Kyoto, Japan

キーワード :

【はじめに】
腸骨静脈圧迫症候群(以下ICS)は交差する右腸骨動脈と腰椎に静脈が圧迫されることや下大静脈への流入角が鈍角であることにより生じ,解剖学的に左総腸骨静脈に多い.今回我々はICSにより左腸骨静脈にステント留置した症例に対し,超音波検査経過観察中にステントにcrushを来した症例を経験したので報告する.
【症例】
43歳 女性  既往歴:左下肢DVT プロテインC及びS欠乏症なし,抗カルジオリピン抗体陰性.現病歴:2007年3月 左DVTで血栓溶解療法をした後,左腸骨静脈に圧較差10mmHgを認めPalmaz stent(Cordis)を留置した.PT-INR1.5〜2.0とワーファリンによる抗凝固療法にて外来フォローされていたが2007年7月頃より反復性の左下肢腫脹が出現,下肢静脈エコーを実施したところ,stent crushが疑われ,精査治療目的にて入院となる.
【超音波所見】
右腸骨動脈と腰椎間で左総腸骨静脈内のステントが内径2.1mmと圧排を受けcrushしている様子が観察され,左総腸骨静脈の血流速度が35cm/s(前回比1.8倍)と上昇し,stent crushを疑う所見であった.
【下肢静脈造影】
正面からの静脈造影ではステントの拡張は保たれているものの右総腸骨静脈への側副血行路を認める.側面からの撮影ではステントの中側半分が高度狭窄を呈しており,stent crushの診断で追加拡張の治療を施した.
【術後超音波所見】
左総腸骨静脈内のステントは拡張性を保ち(内径6.8mm)ステント内流速も20cm/sと正常化を維持していること確認した.
【考察とまとめ】
ICSステント留置に対しての経過観察で腸骨領域の超音波検査が有用であった症例を経験した.本症例は痩せ型の女性で時に大きなバックルのベルトを身につける習慣があったとの事でstent crushの原因のひとつと考えられる.ステントの選択に関しては海外ではself expandable stentが一般的に使用されているが,wall stent を用いた場合,径の太い下大静脈へのスリップや慢性期にステントが短縮して病変部を支持できない等の問題があるので,当院では病変によってballon expand ,self expandと使い分けている 1). 今回,腸骨領域の血管超音波検査が診断から治療,経過観察に至るまで有用であった症例を経験した.今後もICSを疑う症例並びにstent implantを行った症例には積極的に骨盤内血管を観察する必要があると思われた.
【参考文献】
1)S.Nakamura, O Katoh et al: Stent Implantation for Iliac Compression With Acute Deep Vein Thrombosis : A Case Report J Cardiol 2002,40:71-78 1