Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般ポスター
循環器:症例1

(S484)

新生児臍部動静脈奇形の一例:超音波所見を中心に

Umbilical arteriovenous malformation : US findings

高橋 亜希1, 平井 都始子2, 丸上 永晃2, 吉田 美鈴2, 山下 奈美子2, 高濱 潤子1, 金廣 裕道3, 高橋 幸博4, 吉川 公彦1, 大石 元2

Aki TAKAHASHI1, Toshiko HIRAI2, Nagaaki MARUGAMI2, Misuzu YOSHIDA2, Namiko YAMASHITA2, Junko TAKAHAMA1, Hiromichi KANEHIRO3, Yukihiro TAKAHASHI4, Kimihiko KICHIKAWA1, Hajime OOISHI2

1奈良県立医科大学放射線科, 2奈良県立医科大学中央内視鏡超音波部, 3奈良県立医科大学小児外科, 4奈良県立医科大学新生児科

1Radiology, Nara medical university, 2Central ultrasound and endoscopy, Nara medical university, 3Pediatric surgery, Nara medical university, 4Neonatology, Nara medical university

キーワード :

【はじめに】
新生児における動静脈奇形の報告の多くは四肢や頭頸部であり,臍部の動静脈奇形もしくは動静脈瘻に関する報告はきわめて稀で検索しえた限り過去に5例の報告を見るのみである.いずれの症例も血管造影で診断されており,2例のみに超音波検査が補助的に併用されていた.今回我々は臍部に発生した動静脈奇形の一例を経験し,その診断に超音波が有用であったので超音波所見を中心に報告する.
【症例】
在胎38週3日,2784gで出生した男児.骨盤位のため帝王切開で出生.Apgar score 9/10で,異常なく経過していた.日齢2に臍クリップを抜去.日齢3の夜,臍輪部からの出血を認め,出血性ショックの状態で直ちにNICUに緊急入院となった.出血源検索目的に施行された腹部超音波検査で,臍直下に拡張した異常血管塊を認めた.パルスドプラ法で両方向性,拍動性の乱流波形を認め,動静脈奇形を疑った.この血管塊には両側外腸骨動脈から分岐し,膀胱外側を通り腹壁に沿って上行する臍動脈が流入していた.また,血管塊から肝鎌状間膜内を上行し門脈臍部に連続する静脈を認め,臍静脈が流出静脈と考えられた.臍静脈周囲には蔦状に絡みつく動脈を認め,この動脈も異常血管塊に流入していた.引き続き施行された腹部造影CTでも臍下部の異常血管塊とそれに流入する両側臍動脈,流出する臍静脈が明瞭に描出され,臍部以外に明らかな血管奇形がなく,異常血管塊は臍部に限局していることを確認した.循環動態が安定すると再度臍部からの出血を認め,止血に難渋したため,全身状態の改善を待って日齢29に手術が施行された.臍直下異常血管塊に連続する臍動脈2本と左腹直筋枝の計3本の流入動脈と,約5mmと拡張した流出静脈である臍静脈の関与を確認,各流入・流出血管を結紮,臍部異常血管塊を摘出した.病理組織学的にもこの異常血管塊内部の小動脈周囲には不規則に走行する動静脈と,両者のいずれとも判断できない血管の介在が認められ,臍下部動静脈奇形と診断された.
【まとめ】
形態のみならず血流方向や血流速度などの詳細な情報が得られる超音波は動静脈奇形の診断に重要な役割を果たしている.動静脈奇形は新生児期や小児期に発見されることが稀ではなく,小児患者において沈静や造影剤を使用することなく無侵襲に施行できる超音波検査の有用性を再認識した1例であった.