Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般ポスター
循環器:脈管

(S480)

頸動脈の超音波integrated backscatter値と動脈硬化危険因子との関連

Relationship between Ultrasound Integrated Backscatter Values of Carotid Arteries and Cardiovascular Risk Factors

伊藤 陽子1, 川崎 雅規2, 山田 清文3, 吉村 紳一3, 岩間 亨3, 湊口 信也2

Yoko ITO1, Masanori KAWASAKI2, Kiyohumi YAMADA3, Shinichi YOSHIMURA3, Toru IWAMA3, Shinya MINATOGUCHI2

1近石病院内科, 2岐阜大学医学部附属病院循環病態学, 3岐阜大学医学部附属病院脳神経外科

1Internal Medicine, Chikaishi Hospital, 2Cardiology, Gifu University Graduate School of Medicine, 3Neurosurgery, Gifu University Graduate School of Medicine

キーワード :

【目的】
我々は頸動脈内膜プラークおよび中膜の超音波integrated backscatter(IB)値が血管の組織性状と硬さを反映することを報告した.本研究の目的は頸動脈内膜プラークおよび中膜のIB値と動脈硬化危険因子の関連を明らかにすること.
【対象と方法】
超音波測定装置はPhilips Medical社製SONOS5500およびSONOS7500で,5MHz-12MHzのセクタ探触子を使用した.中膜の解析では血管炎症候群,悪性腫瘍を除く患者及び健常者229例(平均63±16歳,男性142名,女性87名)を対象とし,内膜プラークの解析では,頸動脈に50%以上の狭窄を認める患者87例(平均69±8歳,男性79名,女性8名)を対象とした.中膜の解析では内頸動脈と外頸動脈の分岐部より10mm近位の総頸動脈の後壁の中膜のIB値を測定した.内膜プラークの解析では,プラーク全体を2mmごとの断面で解析し,プラーク全体の体積に対する脂質成分とプラーク内出血の体積の割合を求めた.各部位の血管内腔のIB値を絶対値から減じた補正値を算出し,冠動脈危険因子(高血圧症,糖尿病,喫煙歴,脂質異常症)の有無と比較検討した.
【結果と考察】
中膜のIB値は危険因子のある群ではない群より高かったが,その数が増加してもさらに増加する傾向は認められなかった(0: 10.9 ± 4.7, 1: 13.0 ± 3.6, 2: 13.4 ± 3.5, 3: 13.3 ± 3.2 and 4: 14.1 ± 3.2dB, p<0.05).年齢で補正後のIB値は喫煙歴とのみ関連した(p<0.005).内膜プラークの脂質成分とプラーク内出血の体積の割合は,危険因子3つの群で危険因子1つの群に比較して高かった(1: 44.5 ± 25.5 and 3: 62.0 ± 26.5%, p<0.05).年齢で補正後の脂質成分とプラーク内出血の割合は高血圧とのみ関連した(p<0.001).
【結論】
動脈危険因子はいずれも頸動脈の硬化および不安定化させる.中膜の硬化は喫煙と関連を示し,プラークの不安定性は高血圧症と関連を示した.症例数が少ないことが研究の限界として挙げられるが,動脈硬化危険因子が中膜と内膜プラークに及ぼす影響の機序は異なる可能性が示唆された.