英文誌(2004-)
一般ポスター
循環器:心機能,その他
(S479)
経胸壁心エコーで得られる左房駆出率は左心耳機能低下を鋭敏に反映する
Left atrial ejection fraction (LAEF) is a novel marker of left atrial appendage dysfunction in acute stroke patients
佐々木 真太郎, 渡邉 哲, 田村 晴俊, 西山 悟史, 久保田 功
Shintarou SASAKI, Tetsu WATANABE, Harutoshi TAMURA, Satoshi NISHIYAMA, Isao KUBOTA
山形大学医学部内科学第一講座
Department of Cardiology, Pulmonology, and Nephrology, Yamagata University School of Medicine
キーワード :
【背景】
我が国における脳血管疾患の発症者数は増加傾向にあるが,なかでも心原性脳塞栓はより重篤化し易いにも拘らず,高齢者人口の増加に伴いその発症数が増加している.心原性脳塞栓の原因の約8割は心房細動による左心耳内血栓形成である.現在,経食道心エコーを用いた左心耳血流速度や左心耳モヤモヤエコーの評価が左心耳機能評価法として確立しているが,侵襲的でありスクリーニングとしては不適である.近年,左房駆出率(left atrial ejection fraction LAEF)が左房機能低下と関連するという報告が散見されるが,その有用性は未だ確立されていない.今回我々はLAEFが左心耳機能低下を示す新たな指標となり得るかを検討した.
【方法】
当院へ入院した心房細動を有する脳梗塞症例77例に対し経胸壁心エコー,経食道心エコーを行った.LAEFは心尖部二腔像と四腔像から得られる収縮期と拡張期の像からbiplane modified Simpson methodにより算出した.LAEFが左心耳能低下の指標として確立されている左心耳血流速度(LAA peak emptying flow velocity; LAA eV)と相関するか検討した.
【結果】
LAEFは左心耳血流速度低下群(< 20 cm/s)において有意に低値であり(46 ± 15 vs. 26 ± 9, p<0.05),LAEFはLAA eVと有意な正の相関関係を認めた(R=0.447, p<0.0001).全症例を対象とすると経胸壁心エコーで得られるパラメーターでは,左房径,E波,左房容積係数,LAEFが左心耳血流速度と有意な相関関係を示したが,心房細動症例(n=23)においては,唯一LAEFのみがLAA eVと有意な相関関係を示した (R=0.684, p<0.01).LAEFのcut off値を31%未満とすると,感度 79%,特異度 71%で左心耳血流速度低下を反映した.LAEF低値群(<31%) において,有意に左心耳血流速度低下と左房モヤモヤエコーを高頻度に認めた(LAA eV, 27 ± 18 vs. 49 ± 21 cm/s, p<0.05; SEC, 57% vs. 30%, p<0.05).ロジスティック解析においてLAEF低下は独立した左心耳機能低下(LAA eV < 20 cm/s)の予測因子であった.
【結論】
経胸壁心エコーによるLAEF測定により非侵襲的に左心耳機能解析が可能である.