西田 絢一¹, 湯田 聡², 望月 敦史¹, 山本 均美¹, 神津 英至¹, 村中 敦子¹, 下重 晋也¹, 土橋 和文¹, 渡邉 直樹², 島本 和明¹

Junichi NISHIDA¹, Satoshi YUDA², Atsushi MOCHIZUKI¹, Hitomi YAMAMOTO¹, Hidemichi KOUZU¹, Atsuko MURANAKA¹, Shinya SHIMOSHIGE¹, Kazufumi TSUCHIHASHI¹, Naoki WATANABE², Kazuaki SHIMAMOTO¹

¹札幌医科大学第二内科, ²札幌医科大学臨床検査医学

¹Second Department of Internal Medicine, Sapporo Medical University School of Medicine, ²Department of Clinical Laboratory Medicine, Sapporo Medical University School of Medicine

キーワード :

【背景】
3次元心エコー（3D）法は，2次元心エコー（2D）法より正確に左房容積（LAV）を計測可能であるが，発作性心房細動（PAF）例での検討は少ない．最近，PAF例に対してカテーテルによる肺静脈隔離術（PVI）が施行されるようになり，PVI後の洞調律の回復に伴い，慢性期にLAVが減少すること（reverse remodeling）が報告されている．今回我々は，PAF例においてmulti-detector computed tomography （MDCT）で求めたLAV（MDCT-LAV）を基準にして，modified Simpson法および3D法で求めたLAVとの相関関係を検討し，さらにPVI前後でのMDCT-LAVの変化をいずれのLAV指標が正確に評価可能か検討した．
【目的】
PAF例のLAVおよびPVI前後のLAVの変化を，modified Simpson法および3D法で評価し，その精度を比較検討すること．
【方法】
2008年7月から2009年8月までに，心エコー検査と3D法を同時に施行しえたPAFの既往を有する30例（年齢58±10才，男性23例）を対象とした．MDCTは心エコー検査の5日以内（平均1±1日）に施行し，MDCT-LAVを計測した．心エコー検査によるLAVは，modified Simpson法（2D-LAV） および3D法（3D-LAV）で求めた．心エコー検査により左房径，左室拡張末期径，左室心筋重量係数，左室駆出率，E/Aを求めた．なお，持続性心房細動および心臓手術例は検討から除外した．30例中8例においてPVI施行3ヶ月後の2D-LAV，3D-LAV およびMDCT-LAVを計測し，その変化量を求めた．
【結果】
左房径，2D-LAV，3D-LAVおよびMDCT-LAV は各々38±6 mm，60±28 ml，63±26 mlおよび97±33 mlであり，MDCT-LAVを基準にすると2D-LAV，3D-LAVは各々36±23 ml，34±24 ml 過小評価していた．MDCT-LAV と2D-LAV（r ＝ 0.74, p＜0.001）および3D-LAV（r ＝ 0.69, p＜0.001）は各々正の相関関係を認めた．PVI前後で，2D-LAV，3D-LAV およびMDCT-LAV の変化量は各々-5±14 ml，15±22 mlおよび15±22 mlであった．PVI後，MDCT-LAV（110±48 to 95±49 ml，p＝0.10）および3D-LAV（74±39 to 58±23 ml，p＝0.09）は減少傾向を示したが，2D-LAV（58±23 to 63±21 ml，p ＝ NS）は有意な変化を認めなかった．MDCT-LAV上reverse remodelingを認めた6例中，2D-LAVでは4例（67％），3D-LAVでは5例（83％）でreverse remodelingありと判断しえた．
【結論】
今回の検討したPAF群では，MDCT-LAVに比べ，3D-LAVは2D-LAVと同程度に過小評価していた．一方，PVI前後の検討では，3D法は，modified Simpson法よりも正確にreverse remodelingを評価しうる可能性が示唆された．