Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般ポスター
基礎:基礎

(S472)

分離合成チャープ信号を用いた生体高調波画像化法の検討

Tissue Harmonic Imaging using FM Linear Chirp Signal Based on Split and Merge Strategy

田邉 将之1, 2, 山村 拓也3, 大久保 寛1, 田川 憲男1

Masayuki TANABE1, 2, Takuya YAMAMURA3, Kan OKUBO1, Norio TAGAWA1

1首都大学東京大学院システムデザイン研究科, 2日本学術振興会特別研究員(DC), 3首都大学東京システムデザイン学部

1Graduate School of System Design, Tokyo Metropolitan University, 2Research Fellow (DC), Japan Society for the Promotion of Science, 3Faculty of System Design, Tokyo Metropolitan University

キーワード :

【背景】
近年超音波プローブの性能向上により,超音波画像の画質が飛躍的に向上してきている.その結果,より高精度で高機能な超音波医療診断の可能性が高まっており,RF信号を統計処理することで組織性状診断を行う研究などが行われている.著者らは高精度・高機能な医療診断を行うために高い信号雑音比(Signal-to-noise ratio:SNR)で高空間分解能な信号を得ることを目標としている.これまでにSNRを向上させるための手法としてソナー技術として開発されたパルス圧縮技術(Pulse compression technique:PCT)が提案されている.PCTでは振動子の帯域幅を考慮したFMチャープ信号を照射し,エコーと送信信号との相関処理を行うことで,パルスと同じ空間分解能を保持したまま高SNRな画像を得ることができる.SNRは信号長Tと帯域幅Bの積(Time-Bandwidth Product:TBP)によって決まり,ガウス窓のかかった正弦波一波を照射した時のTB倍のSNRが得られる.また空間分解能を向上させるための手法として生体高調波画像化法 (Tissue Harmonic Imaging : THI)が提案されている.THIとは音波が生体を伝搬する際に生じる非線形歪みから高調波成分を分離し画像化する手法である.THIの特徴として(1)高調波成分は基本波成分の帯域幅の整数倍の帯域幅を有するため,パルス幅は基本波成分の半分となる.また(2)基本波画像と比較してアーチファクトの少ない画像が得られる.しかしながら(3)高調波成分は伝搬過程において徐々に生成されるため,近距離などでは不明瞭な画像となってしまうなどの問題がある.THIでの高調波成分をより効果的に抽出する手法としてパルスインバージョン法(Pulse Inversion : PI)が提案されている.PIでは一つの信号を得るために位相の反転した2つの信号を送信しエコーを加算処理することで,反転位相となる基本波成分がキャンセルされ同位相となる第二高調波成分が倍増されSNRが向上する.PIを用いることで基本波成分と高調波成分の帯域が重なっていても,基本波成分がキャンセリングされるため,高調波は基本波の影響を受けずに広帯域な画像化が可能となる.しかし二つの信号を照射する間に対象物が動いた場合,それぞれのエコーの波形が異なってしまい基本波をうまくキャンセルすることができず,残ってしまった基本波成分が高調波画像に悪影響を与えてしまう.
過去にPCTとTHIを組み合わせる手法が提案されているが,基本波と高調波の分離度を高めるために送信信号の帯域を制限するため,THIとPIを組み合わせて用いる時と比べて空間分解能が悪いという問題点がある.またPCTとTHIにPIを用いる手法も考えられるが,信号長の長いチャープ信号を二発照射している間に対象物は大きく移動し基本波がキャンセルできず広帯域化は難しいと考えられる.
【提案手法】
そこでPCTとTHIに分離合成法を採用し,重なりあう基本波成分と高調波成分を分離する手法を提案する.本手法ではチャープ信号を二つ以上に分割して送信する.分割の際,基本波と第二高調波成分の帯域が重なりあわないよう帯域幅を設定する.そして受信したエコー信号をそれぞれフーリエ変換し高調波成分のみ取り出した後で合成することで,照射した信号の帯域幅とエコーの高調波の帯域幅が重なっているにも関わらず基本波と高調波を分離することが可能となる.本研究では非生体実験による評価を行う.