Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般ポスター
基礎:基礎

(S471)

超音波検査室の照明設置位置・照度によるCRTモニターの輝度比に与える影響

Effect of Installation Position and illuminance level of the illumination in Ultrasound Room on Luminance Ratio of CRT Monitor of Ultrasound Equipment

田代 洋行1, 島ノ江 信芳3, 杜下 淳次1, 野口 ゆかり1, 外園 栄作1, 小宮 陽子2, 樗木 晶子1, 中村 邦夫4

Hiroyuki TASHIRO1, Nobuyoshi SHIMANOE3, Junji MORISHITA1, Yukari NOGUCHI1, Eisaku HOKAZONO1, Yoko KOMIYA2, Akiko CHISHAKI1, Kunio NAKAMURA4

1九州大学医学研究院保健学部門, 2九州大学病院検査部, 3(株)コ・メディカル代表取締役, 4ヤマギワ(株)福岡営業所

1Department of Health Siences, Fuculty of Medical Sciences, Kyushu University, 2Clinical Chemistry and Laboratory Medicine, Kyushu University Hospital, 3President, Co-Medical Co.,Ltd., 4Fukuoka Office, Yamagiwa Corporation

キーワード :

【緒言】
超音波検査において,環境照度が診断に影響を及ぼすことはよく知られている.しかし,近年の超音波検査装置のコントラスト分解能,距離分解能,モニター自体の表示性能などの向上により,超音波検査が普及しはじめた頃に比べ,非常に暗い照明環境での検査は必要でなくなってきた.実際,いくつかの施設で超音波検査室の照度計測を行ったところ,暗室のような環境で行っている施設から,寝室程度の明るさで行っている施設まで様々であった.極端に暗い環境での検査は,被検者の不安感を高め,転倒などの事故も誘発する.また,暗い環境で高輝度なモニターを見続けると,検査者の眼精疲労も生じやすい.我々のグループでは,被検者が不安や不快を感じず,かつ診断結果に影響を及ぼさない照明条件について検討を行っている.今回,照明がモニターに映り込むことにより生じる輝度比の低下の割合について,照明の設置位置や明るさを変えて検討を行ったので報告する.
【方法】
超音波検査においては,検査室の照明条件により,最大階調が得られるように,CRTモニターのブライトネス,コントラストの調整を行う.そのため,まず,下記のような照明の設置位置と明るさにおいて,モニターのブライトネス,コントラスト調整を行った結果を記録し,各照明条件におけるモニターのブライトネス,コントラスト設定が一定になるようにした.この際,幅80cmの2本直管形コンパクト形蛍光管による間接照明は被検者側に設置した壁面照明にて行い,床からの高さを120cm,160cm,210cmと移動させ,さらに各高さにおいて水平方向に幅320cm の範囲で設置位置(ベッド頭部方向の壁面から93cm,173cm,293cm,413cm)を移動させて,検査者の顔前照度とモニターの設定条件について記録を行った.合計12条件において,モニター調整を行いつつモニター表示の最大輝度比を計測した.
【結果】
超音波検査装置に近い位置に照明を設置した場合,管面に対する直接の映り込み量が減るため,輝度比に与える影響は,装置から離れた位置に設置するより少なかった.しかし,装置に近い位置に設置した場合,検査者の目に直接,照明が入り込み,グレアによる識別可能な輝度範囲の減少が起こるため,設置位置は,検査者の後方が良いと思われた.検査者のやや後方に照明を設置した場合,輝度比を40%低下させる画面前の照度は1〜2Lux程度であり,比較的暗い照明でも画像に対し影響があることが示唆された.
【結語】
検査者や装置を直接照らす照明は望ましくなく,壁面に付けた間接照明,あるいは天井,床から壁面を照らす間接照明が望ましいと考える.このような照明を用いると,検査者のまぶしさ,画面への照明の映り込みを押さえつつ,部屋の印象を明るくすることが可能である.また,天井から部屋全体を照らすような直接照明は,検査者からは気づかないが,検査中,被検者は上方を向いており,まぶしさを感じることもある.被検者の視野の中に,直接照明が入らないような配慮も必要と考える.実際,診断する上で,どの程度の輝度比が必要なのか,重要な課題であるが,機種ごとの分解能,表示能力の違いも大きく,近年,普及しはじめた液晶モニターの評価,精度管理とあわせて,今後,検討が必要である.また,今回,映り込みによる輝度比低下に関して検討を行ったが,今後は検査者からみた背景の明るさの違いによる識別可能な輝度範囲の考慮,照明条件による検査者の疲労,被検者の快適性の評価などもあわせて行い,総合的によりよい超音波検査室の照明環境条件について提案していきたい.