Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般ポスター
基礎:基礎

(S469)

骨内画像化への応用を目指した広帯域超音波探触子に関する検討

Study on Wide-Band Ultrasonic Transducer for Imaging of Inside Bone

河本 江平1, 入江 喬介2, 3, 田邉 将之2, 田川 憲男2, 大久保 寛2, 秋山 いわき4, 伊東 紘一5

Kouhei KOUMOTO1, Takasuke IRIE2, 3, Masayuki TANABE2, Norio TAGAWA2, Kan OKUBO2, Iwaki AKIYAMA4, Kouichi ITOH5

1首都大学東京システムデザイン学部, 2首都大学東京大学院システムデザイン研究科, 3マイクロソニック株式会社開発部, 4湘南工科大学工学部, 5常陸大宮済生会病院内科

1Faculty of System Design, Tokyo Metropolitan University, 2Graduate School of System Design, Tokyo Metropolitan University, 3Reserch and Deveropment, Microsonic Co. Ltd., 4Faculty of Engineering, Shonan Institute of Technology, 5Department of Internal Medicine, Hitachi-Omiya Saiseikai Hospital

キーワード :

【はじめに】
これまでに我々が行ってきた骨内の超音波画像化実験より,超音波の伝搬減衰だけでは説明のできない骨内部の周波数特性が確認されている[1],[2].しかしその実験では,周波数に応じて複数の探触子を用いており,信頼性の高い評価・解析のためには単一の探触子で一括して全周波数の計測を行う必要がある.一方,文献[3]で共振周波数の異なる2種の振動子を接着して構成する多共振型広帯域探触子が検討されている.そこでの探触子開発の目標は,エコー画像化におけるスペックル除去のための広帯域計測にあるため,送信パルスの形状も画像化にとって適切でなければならず,様々な工夫がなされている.対して本研究では,基本的には透過型の計測による周波数解析を想定するため,パルス形状に対する要求は緩和でき,探触子製作における材料選定等の自由度が増えるという利点がある.本研究では超音波伝搬解析コードPZFlexを用いたシミュレーションを中心に,透過計測を念頭においた多共振型広帯域探触子の検討を行う.
【方法】
今回検討する探触子は,それぞれ0.5MHzと5MHzに共振周波数を有する2枚のディスク状のPZTを接着した構造である.5MHz共振のPZTに5MHzの正弦波電圧を1波だけ入力すると,それによる厚み振動により0.5MHz-PZTにその基本共振モードである0.5MHzの振動,及びその高調波振動が誘起され,全体が広帯域探触子として機能する.すなわち,0.5MHz-PZTは機械的な共振体として働き,5MHz-PZTが発するインパルス状の機械振動が共振シードとなってシステム全体の共振を引き起こすことになる.ここで注意すべきは,5MHz-PZTが貼付されている送信側に最初に生じるパルスに加え,逆側の0.5MHz-PZT端面での多重反射成分が第二パルスとして続けて送信されることである.上述のように,エコー画像化に使用する際には,この2番目のパルスを除去する必要があり,0.5MHz振動子をコンポジット材料として多重反射を軽減するといった工夫が必要である.一方で,本研究では透過型計測を想定しているため,透過波計測後に第一パルスに対応する情報だけを抽出して解析すればよいことになる.今回は上述の共振原理の確認を目的とする.5MHz-PZTを介して機械振動をシードとすることの有効性を確認するために,0.5MHz-PZTを単体で圧電素子として利用し,その両端に同様の5MHzの正弦波電圧1波を印加した場合との相違をシミュレーションにより確認する.
【結果】
送信超音波の第一パルスのみを抽出してFFT処理を施し,各周波数の振幅値を入力電圧パルスのそれで規格化した.5MHz-PZTに電圧を印加した結果と0.5MHz-PZTに電圧を印加した結果を比較したところ,スペクトル形状は後者の方が平坦であったが,出力レベルが1桁以上異なり,前者の効率が非常に高いことが確認できた.
【考察】
今回の結果より,共振体(0.5MHz-PZT)へのシード入力として,直接電圧を加えるよりも,一旦機械振動に変換したものを用いることが有効であることがわかった.今後,シードとなる機械振動の効果的な入力法について,詳細に検討を進める予定である.
【参考文献】
[1]T.Irie, E. Ohdaira, K. Itoh:Ultrasonics 42 (2004) 713
[2]T. Irie and K. Itoh:Proc. Int. Congress on Ultrasonics (2007) Paper ID 1355
[3]吉住,中村,秋山:電子情報通信学会技報,US2009-21 (2009) 43