Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
整形外科:整形外科2

(S465)

運動器検診にて発見された上腕骨小頭障害の超音波病期分類

Staging of Capitellum Osteochondrosis by ultrasonography that found in medical checks

山口 睦弘1, 2, 大槻 宏芳2, 松崎 正史2, 茅野 裕樹2, 丹羽 志津3, 草野 留美3

Mutsuhiro YAMAGUCHI1, 2, Hiroyoshi OHTSUKI2, Masashi MATSUZAKI2, Hiroki CHINO2, Shizu NIWA3, Rumi KUSANO3

1労働者健康福祉機構千葉労災病院検査科, 2NPO法人日本スポーツメディシン理事, 3NPO法人日本スポーツメディシン超音波検査士

1Clinical Laboratly, Chiba Rosai Hospital, 2Director, Japan Sport Medicine, 3Sonographer, Japan Sport Medicine

キーワード :

【はじめに】
従来上腕骨小頭障害の画像診断といえば単純X線がファーストチョイスの検査法であり診断から経過観察,治癒判定までをカバーしてきた.しかし近年超音波診断装置の性能の向上に伴い運動器領域での有用性がひろく知られるようになり,上腕骨小頭障害が超音波にて容易に検出され有用であるとの報告も多く見られるようになってきた.しかし発見された障害の病期分類は単純X線による分類がまだ一般的でありX線分類に合わせて超音波画像を大まかに分けていたのが現状であったが昨年の第82回本学会において石崎らによって超音波による詳細な分類が発表された.今回この分類法を用いて超音波運動器検診によって発見された上腕骨小頭障害の病期分類を行ったので報告する.
【対象および方法】
対象は2007年兵庫県西宮市,2008年長野県長野市,2009年新潟県新潟市にて行った野球肘検診を受診した小学生713名のうち超音波検査にて上腕骨小頭障害と判断された31肘とした.方法は記録保存された画像から石崎らによる超音波分類に沿って病期を分類した.使用装置は,SonoSite(USA)社製 MicroMaxx 使用探触はHFL38/13-6 ,M-Turbo 使用探触子は,HFL38x/13-6,Esaote(Italia)社製 MyLab25 使用探触子はLA523E.
【結果】
31肘のうち21肘がⅠa(67.7%),残りの10肘がⅠb(32.3%)であった.石崎の分類によると初期をa〜dの4期に分類されているが,検診で発見されたのはaとbのごく初期のみで他の病期はなかった.超音波画像を分類する上でⅠaとⅠbの間にはⅠbの方がかなり進行しているような印象を受けた.
【考察】
運動器検診によって発見された小頭障害は超音波分類ではごく初期であったことから放置すれば重篤な状態に陥る障害を早期発見,早期治療へと導くための健診における検査法として超音波検査は重要な位置づけになると思われた.また,石崎の分類では単純X線での初期像を4段階に分類しているが,これは超音波が単純X線よりはるかに分解能に優れているためであると考えられる.今回の検討でも31肘の分類はⅠaとⅠbのみであったが超音波画像上では両者に大きな差異が見られたのは,超音波が軟骨下骨の変化を画像上に鮮明に表現する能力に長けている証拠だと思われる.運動器検診という多数の受診者を短時間で検査する場では必ずしも超音波検査能力に優れた人員で検診に望めるとは限らず不慣れな人員が混ざることもある.たとえこのような状況でも検査手技は煩雑でなく画像の読影も初期像であったとしても初心者が見落としなく判断することは可能であり,今後ますます超音波検診が広がっていくことを期待したい.