Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
整形外科:整形外科2

(S464)

超音波を用いた手根管症候群診断における測定方法の検討

Study measuring method in the diagnosis of carpal tunnel syndrome using ultrasound

前田 佳彦, 齋田 善也, 今田 秀尚, 木村 友哉, 西﨑 まや, 近藤 紘代, 水口 仁, 河野 泰久, 大山 裕生, 佐野 幹夫

Yoshihiko MAEDA, Yoshinari SAIDA, Hidenao IMADA, Tomoya KIMURA, Maya NISHIZAKI, Hiroyo KONDO, Hitoshi MIZUGUCHI, Yasuhisa KOUNO, Yusei OOYAMA, Mikio SANO

医療法人豊田会刈谷豊田総合病院放射線技術科

Department of Radiological Technology, TOYOTA-KAI Medical Corporation KARIYA TOYOTA General Hospital

キーワード :

【目的】
手根管症候群(CTS)は絞極性神経障害の代表的疾患である.本症は,手根骨と屈筋支帯で構成される手根管内を屈筋腱群などと共に通過する正中神経が,様々な原因によって圧迫を受けることで発症するといわれている.診断には,症状に一致した神経学的所見の他に神経伝導速度検査(NCS)において,手根部での伝導遅延を証明することが必須でありこれらの併用がgold standardと考えられている.当院では,2009年6月より整形外科領域の超音波検査(US)を診察室と超音波室において施行している.今回我々は,CTSの診断において手根部のUSを実施し,臨床的に有用な測定方法を検討したので報告する.
【方法】
対象は,当院にて2009年6月から11月に臨床症状でCTSと診断した患者(CTS群)で手根部USと同時期にNCSを施行した18人36手(男女比1:2,平均年齢59.9歳)と健常人ボランティア18人36手(健常群)とした.通常検査では,USにて遠位手首皮線を目安に舟状骨と豆状骨の掌側骨頂点を横断面で描出し,それらの頂点を結ぶ(横径線)距離を計測後,横径線から突出する手根管内容の掌側頂点距離(頂点法)の値を基に診断している.今回,検査後の画像を基にImage Jを用いて解析し横径線から突出する手根管内容の面積(面積法)値を計測した.検討項目は,健常群とCTS群の性差別における横径値の比較.頂点法と面積法で得られた計測値における相関関係.頂点法,面積法の計測値とNCSにおける正中神経終末潜時(T:L)との相関関係である.
【結果】
横径は,健常群男性:33.6±2.3cm,女性:27.5±4.3cm,CTS群男性:34.1±2.1 cm,女性:28.1±3.8cmで,健常群,CTS群とも性差による有意差(p<0.001)を認めた.しかし,男女ともに健常群,CTS群に有意差は認めなかった.頂点法と面積法における計測値の比較では,相関関係(r=0.75,p<0.001)を認めた.頂点法では,健常群:1.1±0.6mm,CTS群:2.8±0.9mm,面積法では,健常群:0.9±0.9mm2,CTS群:3.3土2.2mm2であり,頂点法と面積法で有意差(p<0.001)を認めた.頂点法,面積法の計測値とNCSにおけるTLとの比較では,頂点法(r=0.59,p<0.001)と面積法(r=0.66,p<0.001)ともに相関関係を認めた.
【考察】
正中神経絞恥部の形態的変化を直接評価する検査法は未だ確立されていない.今回の検討で,頂点法と面積法の関係はr=0.75と強い相関を認めた.すなわち,横径線から突出する部分の頂点距離と面積は,ほぼ同等に増強することが考えられた.また,頂点法,面積法の計測値とNCSにおけるTLで相関を認めたことから,手根管内容の横径線より突出する掌側頂点距離と面積を算出することでCTS評価は可能であると考える.絞拒原因となる手根管内容物は,立体的構造のため手根部横断面の一断面だけではなく,長軸方向を加味した立体的評価を行うことができればより詳細な評価が可能であると思われた.また,手技に関し検者間での再現性における検討は行っていないものの,豆状骨と舟状骨の描出は容易であり,計測誤差は少ないと推察された.CTS評価のUS測定法について,頂点法と面積法を併用することで診断に対する信頼性向上が図れるが,簡易的な頂点法のみでも可能であると考える.