Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
整形外科:整形外科1

(S462)

Jリーグ選手におけるスポーツ外傷に対する超音波画像診断の有用性

Utility of Ultrasonography to the Sports Injury in Professional Football

松崎 正史1, 福島 一雅2

Masashi MATSUZAKI1, Kazumasa FUKUSHIMA2

1ソニックジャパン株式会社CEO, 2ライズシティクリニック超音波エコー診断センター

1Chief Executive Officer, Sonic Japan Co., Ltd., Tokyo, Japan, 2Director of Center for Ultrasonogram, Rise City Clinic,Center for Ultrasonogram, Tokyo, Japan

キーワード :

【目的】
プロスポーツにおけるサッカーは,フィジカルコンタクトの激しい競技であり選手は傷害を受ける環境下にさらされている.スポーツ傷害受傷時における画像診断のファーストチョイスは単純X線を用いるが骨の損傷に対する診断であり,筋肉,腱,靭帯といった軟部組織による運動器構成体の損傷を診断することはできない.軟部組織損傷の画像診断となるとMRIを用いるが場所的,時間的制約により全ての傷害に対して適応することが困難な状況にある.超音波検査は,場所的制約,時間的制約を受けることのない簡便な手法であり軟部組織損傷を直接評価できる利点がある.本研究の目的は,Jリーグシーズン開幕直前から開幕期間中における選手の傷害に対して超音波画像診断を施行しその有用性を明らかにすることである.
【方法】
Jリーグ開幕前2009年2月よりシーズン中10月までにおける,Jリーグトップ登録選手平均年齢26.5歳(19〜36歳)35名を対象とし練習,練習試合,公式戦にて受傷した損傷の程度評価を目的として超音波検査を行った.診断目的の受傷部位を肩,上肢,手,体幹,腰,大腿,膝,下腿,足に分類した.さらに運動器構成体を骨,軟骨,筋,腱,靭帯に分類し受傷部位ならびに受傷構成体に対する傾向についての検討を行った.また,Jリーグシーズン期間において超音波検査導入前に施行したMRIの検査件数と導入後に施行したMRI検査件数についても比較しJリーグ選手における外傷に対しての超音波画像診断による有用性について検討も行った.
【結果】
Jリーグ開幕直前並びに開幕期間中においてトップ登録全選手に対して141の診断目的にて超音波検査を行った.受傷部位別は大腿(42/141)が最も多く,足(31/141),下腿(25/141),膝(19/141)の順であった.少数であるが肩(4/141)を診断目的とするケースもあった.傷害を受けた運動器構成体は筋(72/141)が最も多かった.MRIの検査件数は,超音波検査導入前は年間61件であったが,導入後は年間14件であり超音波検査を導入することによりMRIの検査件数は減少した.
【考察】
サッカーの競技特性上,負荷のかかる筋が大腿部に集中しているため受傷部位においては大腿が最も多いものと考えられる.超音波検査は,急性期傷害における損傷程度を正確な診断を可能とするため,初期段階における治療方法の選択ならびに治療戦略を決定することに有用であった.また,繰り返し検査を可能とするため治療効果の判定を正確に行うことにより復帰のタイミングを決定するのに有用であった.そのために超音波検査導入後のMRI検査件数が減少したものと考える.