Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
頭部:頭頸部

(S456)

膜静脈閉塞症の硝子体所見と治療法選択への手がかり

Findings of vitreous in retinal vein occlusion as an indicator of treatment strategy

山田 利津子1, 2, 辻本 文雄3, 宮内 元樹4, 櫻井 正児4, 信岡 祐彦3, 水木 信久1, 庄田 昌隆2

Ritsuko YAMADA1, 2, Fumio TSUJIMOTO3, Motoki MIYA-UCHI4, Masaru SAKURAI4, Sachihiko NOBUOKA3, Nobuhisa MIZUKI1, Masataka SHODA2

1横浜市立大学大学院視覚器病態学講座, 2横浜船員保険健康管理センター眼科, 3聖マリアンナ医科大学臨床検査医学講座, 4聖マリアンナ医科大学病院超音波センター

1Department of Ophthalmology and Visual Science, Yokohama City University School of Medicine, 2MD, Seamen’s Insurance AMHTS Clinic, 3Departmentof Laboratory Medicine, St.Marianna University School of Medicine, 4Ultrasound Center, St. Marianna University Hospital

キーワード :

【目的】
網膜静脈閉塞症(RVO)に伴う視力低下の原因には黄斑浮腫.黄斑虚血,血管新生と硝子体出血,新生血管緑内障他があげられる.治療には近年,大きな変化がみられ,トリアムシノロンや抗VGEF抗体の硝子体内注入,動静脈交差部鞘切開や単純硝子体手術が選ばれるようになった.治療選択の根拠となる硝子体の観察には光干渉断層計(OCT)に依存している傾向がある.しかし,術前の硝子体の観察には超音波Bモードに勝る方法はない.今回は網膜静脈閉塞症における硝子体の動態を超音波診断装置を用いて観察し,眼底所見,OCT所見とあわせて検討した.
【対象】
RVO患者8名(男性5名,女性3名,年齢64.7±9.0歳)を対象とした.対象は網膜静脈閉塞の明確な原因が不明であり,従来の血栓溶解薬や網膜循環改善薬の使用,レーザー光凝固術を施行されていたが,小規模な再出血を繰り返した.
【方法】
超音波画像採取は座位ならびに仰臥位で実施した.超音波Bモード検査で観察ののち,約20秒間をかけて上転に引き続いて下転という強制的眼球運動を実施し,硝子体にみられるaftermovementを記録した.超音波診断装置はSA-700(東芝),EUB-8500(日立)(中心周波数 各々8,6-14MHzリニア電子スキャナ)を用いた. OCTによる観察はCirrus HD-OCT ver 4.0.7(Carl Zeiss Meditec)を用いて行った.
【結果】
RVOでは,黄斑浮腫のほか出血部位にしばしば硝子体膜の付着が観察された.OCTでは網膜内に多数の嚢胞が形成され,網膜外層の浮腫が著明であった.また,硝子体膜の黄斑部網膜への付着は必ずしも観察されるとはかぎらなかった. 超音波Bモード検査では眼内膜様エコーが観察された.膜様エコーの反射は後壁コーに比べてかなり低く,感度断層法で速やかに減衰した.黄斑部付近に接触する硝子体膜は眼内を横切って硝子体基底部付近までつながり,硝子体の全貌が描写された.眼球運動により緩徐でかつ高いaftermovementを示し,付着網膜を牽引している様子が明らかであった.
【結論】
RVOでは後部硝子体剥離の有無が予後を左右するため,治療の選択の前に後部硝子体剥離があるかどうかをよく観察することが重要である.術前の硝子体の静的・動的観察には超音波検査が有用であった.