Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
体表:乳腺・甲状腺・新技術

(S454)

甲状腺腫瘍のelastographyにおけるinterobserver variationの検討

Interobserver variation in elastography of thyroid nodules

村上 司1, 山本 晋1, 橘 正剛1, 西嶋 由衣1, 住吉 周作1, 野口 仁志1, 江藤 佳子2, 谷 好子2, 野口 志郎3

Tsukasa MURAKAMI1, Shin YAMAMOTO1, Seigo TACHIBANA1, Yui NISHIJIMA1, Shusaku SUMIYOSHI1, Hitoshi NOGUCHI1, Yoshiko ETO2, Yoshiko TANI2, Shiro NOGUCHI3

1野口病院内科, 2野口病院研究検査科, 3野口病院外科

1Department of Endocrinology, Noguchi Thyroid Clinic and Hospital Foundation, 2Department of Laboratory Medicine, Noguchi Thyroid Clinic and Hospital Foundation, 3Department of Surgery, Noguchi Thyroid Clinic and Hospital Foundation

キーワード :

【目的】
甲状腺腫瘍のelastography所見は検者の主観的な判断によりパターンで分類して示されることが多いので,検者間における判断の差異の程度について検討した.
【対象と方法】
術前に行ったelastographyの画像が動画で保存されていた甲状腺腫瘍20例の所見について,5名の内分泌内科医,7名の臨床検査技師の計12名が別々にパターン分類に基づいて判定した結果を比較検討した.Elastographyの所見は田中らの方法1)に従い,パターン1:腫瘍内が比較的均一にlight greenに表示されるもの,パターン2:腫瘍辺縁がやや硬くblueに表示されるもの,パターン3:blueの表示にlight green,redの表示が混在するもの,パターン4:腫瘍全体が硬くblueに表示されるものの4とおりに分類した.パターン3と判定された例ではlight greenとblueのどちらを優位と判定するかについても検討した.超音波診断装置およびプローブはEUB-8500,EUP-L54M(日立メディコ)を用いた.12名は甲状腺超音波検査に日常的に従事しており,臨床検査技師のうち4名は日本超音波医学会認定超音波検査士である.20例はいずれも手術標本により病理診断が確定しており,10例は濾胞癌(最大径11〜43mm, median 21mm),5例は乳頭癌(最大径12〜23mm, median 15mm),5例は濾胞腺腫(最大径20〜25mm, median 21mm)であった.石灰化や嚢胞変性の著明な症例は含まれていなかった.
【成績】
12名の検者全員のパターン分類が一致した例は2例,11名が一致した例が6例,10名が一致した例が6例で,残りの6例(濾胞癌,乳頭癌,濾胞腺腫各2例)では9名以下の一致であった.最も多くの検者がパターン3と判定した10例において,light greenとblueのどちらを優位と判定するかについて80%以上の検者の判定が一致した例は6例であった.なお,濾胞癌の10例では最も多くの検者がパターン3と判定した例が6例,パターン2が3例,パターン1が1例であった.乳頭癌の5例では最も多くの検者がパターン3と判定した例が3例,パターン4が2例,濾胞腺腫の5例ではパターン2が4例,パターン3が1例であった.
【考察】
組織のひずみを色で表したelastogramの判定は検者の主観的な判断によるものなので検者間で判定の差異を生じることが考えられるが,これに関する研究は少ない.判定の一致率を正確に求めるためにはさらに多数の症例での検討が必要であるが,今回の検討ではいずれのパターンにおいても検者による判定の差異を生じる可能性が示された.また,パターン3を優位な色で細分化すると判定の差異がさらに増加すると思われた.共通の判定基準や検査手技などを徹底することにより,検者間の判定の差異を少なくすることが期待される.
【参考文献】
[1]田中久美 他,甲状腺結節性病変におけるreal-time tissue elastographyの有用性 MEDIX 41:7-10,2004.