Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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cover

2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
体表:乳腺・甲状腺・新技術

(S452)

エラストグラフィおよび造影超音波で病変の広がりを評価した一側同時多発乳癌の一例

A case of breast cancer performed elastgraphy and contrast enhanced ultrasonography with Sonazoid

中村 卓1, 小林 豊樹1, 建石 真理子2, 吉田 美鈴2, 山下 奈美子2, 伊藤 高広3, 平井 都始子2, 中島 祥介1

Takashi NAKAMURA1, Toyoki KOBAYASHI1, Mariko TATEISHI2, Misuzu YOSHIDA2, Namiko YAMASHITA2, Takahiro ITOH3, Toshiko HIRAI2, Yoshiyuki NAKAJIMA1

1奈良県立医科大学付属病院消化器外科・小児外科・乳腺外科, 2奈良県立医科大学付属病院中央内視鏡・超音波部, 3奈良県立医科大学付属病院放射線科

1Depertment of Surgery, Nara Medical University, 2Depertment of Endoscopy and Ultrasound, Nara Medical University, 3Depertment of Radiology, Nara Medical University

キーワード :

【症例】
70代女性.
【現病歴】
2009年9月,右乳房腫瘤を自覚し,近医受診.近医でマンモグラフィ,超音波検査,穿刺吸引細胞診が施行され,一側同時多発乳癌と診断された.同時に軽度の腎障害も指摘され,MRIでの乳房内広がり診断が困難と判断された.精査,加療目的に同年9月に当科を受診した.
【視触診】
右乳房AB領域に径2cm大,右乳房C領域に径2cm大の可動性良好な腫瘤を触知した.いずれも限局性腫瘤でdelle,Dimplingは認めなかった.
【マンモグラフィ】
右乳房B領域に径1.5×1.1cm大,右乳房C領域に径1.4×0.9cm大の腫瘤を認めた.いずれも境界微細分葉状の高濃度腫瘤で,カテゴリー4と診断した.
【超音波検査】
右乳房AB領域に径0.89×0.95×0.84cm大の境界明瞭粗〓で内部不均一な低エコーな腫瘤が描出された.乳頭方向へ低エコー域が連続しており,乳管内伸展あるいは浸潤が疑われた.また,右乳房C領域には径0.88×1.11×0.64cm大の境界不明瞭で内部不均一な低エコー腫瘤が描出された.こちらも乳頭方向へ低エコー域が連続しており,乳管内伸展あるいは浸潤が疑われた.
【エラストグラフィ】
右AB領域の腫瘤は内部が緑色に描出され,やわらかい腫瘤と思われた.それに対し右C領域の腫瘤は内部が青く描出され,硬い腫瘤と思われた.いずれの腫瘤においても乳頭方向への広がりまでは描出できなかった.前医で穿刺吸引細胞診が施行されており,当院でも見直しを行ったがやはり浸潤性乳管癌と考えられた.部分切除を2箇所行うことが出来るかどうか判断する必要があり,ソナゾイドを用いた造影超音波検査を施行した.
【造影超音波検査】
超音波装置はLOGIQE9(GE Healthcare)のML6-15プローブを用い,amplitude modulation(MI値:0.22)で観察した.ソナゾイドは0.4ml/bodyを静脈内投与した.いずれの腫瘤もBモードで低エコー腫瘤として描出される範囲より大きな範囲で造影効果が認められた.また,乳頭方向への造影効果も認められ癌の乳頭方向への広がりが示唆された.以上より,2箇所部分切除を行う場合,それぞれの切除範囲が大きくなり,温存された乳房の変形が大きいと判断し,2009年10月に右乳房切除術,センチネルリンパ節生検を施行した.AB領域の腫瘍は充実腺管癌が主体で乳管内伸展を伴っていた.また,C領域の腫瘍は乳頭腺管癌が主体だった.病理学的には2つの腫瘍間に連続性は無く,多発癌と診断された.乳癌の乳房内での広がり診断のモダリティとしては造影MRIが推奨されている.しかし,腎機能低下例や腹臥位が困難など,なんらかの理由で造影MRI施行困難な症例にたびたび遭遇する.そのような場合に超音波検査が持っている能力を最大限発揮し,乳房内の広がり診断を行うべきであると思われた.