坪 敏仁

Toshihito TSUBO

弘前大学医学部附属病院ICU

Director of ICU, University of Hirosaki, School of Medicine

キーワード :

【目的】
部分液体換気はフルロカーボンを気管内に直接投与し，酸素化能の改善を計る方法である．液体換気時の肺画像診断は主にCTで報告されてきた．経食道エコーは肺病変部の解析に持いられており，病変部位の連続的な観察が可能である．我々は液体換気時の肺病変部位を経食道エコーで観察し，興味ある結果を得たので報告する．
【方法】
8匹の子豚を全身麻酔下にPEEP5cmH2Oで人工呼吸管理を行った．1ml/kg の0.1N HCl を両肺に投与し，急性障害肺モデルを作成した．フルロカーボンの1種であるperflubron 3, 6 ,10 および20 ml/kg を気管支ファイバー下に気管内投与した．超音波診断装置としてSONOS　7500　（Philips,USA），5MHz64素子経食道エコーを用い，下行大動脈を介して左肺底部観察し，また左肺動脈も観察した．左肺動脈血流速度，障害部面積，局所肺動脈血流速度およびresistive indexを測定した．
【結果】
Perflubron投与後，早期に胸膜への漏出を認めた．Perflubronの肺病変部位への浸潤が観察可能であったが，自体の阻害作用により20 ml/kg投与付近で観察は不能となった．Perflubron は左肺動血流速度，局所肺動脈最大血流速度およびresistive indexをコントロール 1.5±0.3 l/min, 30.4±9.8cm/sec および0.45±0.11 からperflubron 10ml/kg で1.2±0.3 l/min, 19.4±6.9 cm/sec および 0.92±0.32 と有意に変化させた （Mean±S.D., p＜0.05）．
【結論】
経食道エコーはperflubron蓄積の直接の観察が可能であり，液体換気時時の有用なモニターとなりうる．またperflubronの投与はその圧迫により局所肺血流を減少させた．しかし，大量のperflubron投与は超音波による観察を不能にした．また経食道エコーはperflubronの他の部位への漏出の観察も可能であった．