平井 良武¹, 一尾 博史¹, 藤井 佳世子¹, 田中 奈央¹, 執行 瑠美子¹, 石橋 久美子¹, 田中 真紀², 金子 祐子², 山口 美樹², 山口 倫³

Yoshitake HIRAI¹, Hiroshi ICHIO¹, Kayoko FUJII¹, Nao TANAKA¹, Rumiko SIGYOU¹, Kumiko ISHIBASHI¹, Maki TANAKA², Yuuko KANEKO², Miki YAMAGUCHI², Rin YAMAGUCHI³

¹社会保険久留米第一病院検査部, ²社会保険久留米第一病院外科, ³久留米大学医療センター外科

¹clinical laboratory, Kurume daiichi social Insurance Hospital, ²Surgery, Kurume daiichi social Insurance Hospital, ³Surgery, Kurume University Medical Center

キーワード :

【はじめに】
乳腺の化生癌（metaplastic carcinoma）は比較的稀な腫瘍であり通常扁平上皮化生，紡錘細胞，骨・軟骨化生，基質matrixなどの化生成分が存在し，しばしば腫々の程度に混在する．今回紡錘細胞を含んだ乳腺化生癌6症例の超音波所見を病理組織学的背景とともに検討し報告する．
【対象】
当院で診断された紡錘細胞を含む乳腺化生癌6症例
【結果】
症例1）　71歳女性　主訴左乳房のしこり．MMGは不整形高濃度腫瘤（カテゴリー4），USは右C領域に15×15×12mm，楕円形，境界明瞭平滑，後方エコー増強，内部は低エコーと高エコーが混在する充実性腫瘤．症例2）　58歳女性　主訴左乳房のしこり．MMGは微細鋸歯状腫瘤（カテゴリー4），USは左C領域に35×28×24mm，楕円形，境界明瞭一部粗〓，後方エコー増強，内部は低エコーと高エコーが混在する充実性腫瘤．症例3）　53歳女性　主訴左乳房のしこり．MMGは境界明瞭高濃度腫瘤（カテゴリー4），USは左D領域に21×20×14mm，分葉形，境界明瞭やや粗〓，後方エコー増強，内部は低エコーと高エコーが混在する充実性腫瘤．症例4）　44歳女性　主訴左乳房のしこり．MMGは微小円形区域性石灰化（カテゴリー4），USは左B領域に20×20×15mm，分葉形，境界明瞭粗〓，後方エコー軽度増強，内部は低エコー，高エコー，微細石灰化が混在する充実性腫瘤．症例5）　80歳女性　主訴左乳房のしこり．MMGは微細分葉状腫瘤＋微小円形集蔟性石灰化（カテゴリー4），USは左C領域に14× 9× 6mm，分葉形，境界明瞭平滑，後方エコー増強，内部は低エコーと高エコーが混在する充実性腫瘤．症例6）　60歳女性　主訴左乳房のしこり．MMG境界明瞭高濃度腫瘤（カテゴリー3），USは左C領域に45×44×34mm，分葉形，境界明瞭粗〓，後方エコー増強，内部は低エコー，高エコー，嚢胞部が混在する腫瘤．
【考察】
乳癌の大部分は腺癌であるが化生成分が腫瘍の大部分を占めた場合に化生癌とし通常扁平上皮化生成分，紡錘細胞成分，骨・軟骨化生成分，基質matrix成分などの化生成分がしばしば混在する．乳癌取り扱い規約第16版では浸潤癌特殊型に扁平上皮癌，紡錘細胞癌，骨・軟骨化生を伴う癌，基質産生癌などに分類されている．今回紡錘細胞を含む化生癌6症例を超音波所見を中心に報告した．膨張性・圧排性に発育することをを反映し楕円もしくは分葉形の形状を示し，境界は明瞭（平滑もしくは粗〓）となる．腫瘍内は粘液などの液状成分を多く含み減衰は少なく後方エコーは増強する．内部エコーは比較的辺縁部に低エコー部と中心部に高エコー部が混在する不均質なパターンを呈した．組織像は癌細胞が密に大胞巣状に存在する部分と，粘液などの液状成分を背景に癌細胞，線維物などが粗に混在する部分がみられた．大胞巣状に癌細胞が密に存在する部分が低エコーに，液状部分を背景に癌細胞，線維物などが後方散乱を起こした部分が高エコーに描出されると考えられるが内部は癌細胞，さまざまな化生成分，線維物，瘢痕，壊死，血液成分などが混在することが予想され多彩な内部エコーを呈すと思われる．
【結語】
紡錘細胞を含む化生癌6症例の超音波所見を病理組織学的背景とともに検討し報告した．膨張性・圧排性に発育することを反映し楕円〜分葉状の形状，境界は明瞭，後方エコーは腫瘍内の液状成分により増強し，内部エコーは低エコー部と高エコー部が混在，ときに嚢胞構造や微細石灰化像などを伴う．