Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
体表:乳腺・甲状腺・診断

(S446)

乳腺内の低エコー域に対する超音波カラードプラ法

Doppler ultrasound of low echo areas in the mammary gland

奥野 敏隆1, 佐藤 信浩2, 登尾 薫2, 山野 愛美2, 内田 浩也2

Toshitaka OKUNO1, Nobuhiro SATOH2, Kaoru NOBORIO2, Megumi YAMANO2, Hiroya UCHIDA2

1西神戸医療センター外科, 2西神戸医療センター臨床検査技術部

1Department of Surgery, Nishi-kobe Medical Center, 2Department of Clinical Laboratory, Nishi-kobe Medical Center

キーワード :

【はじめに】
検診の普及に伴い,マンモグラフィの石灰化で発見されるなど,画像のみで認識できる乳癌が増加している.これらは超音波では腫瘤像非形成性病変,なかでも乳腺内の低エコー域を呈することが多い.存在の認識も困難な場合があるが,カラードプラを行うと血流の増加により認識でき,さらに適切な診断の契機となることがある.そこで乳腺内の低エコー域に対するカラードプラ法をretrospectiveに検討した.
【対象】
確定診断を得た乳腺内の低エコー域を呈した乳腺病変91例中,カラードプラ法を行った45例.内訳は乳腺症18例,非浸潤性乳管癌(以下DCIS)16例,浸潤癌11例である.
【方法】
装置の設定,操作法は乳房超音波診断ガイドライン第2版に準じて行った.腫瘤像非形成性病変においては血流の形態として定まったものはないため,「豊富さ」で評価した.血流の豊富さ,すなわちバスキュラリテイを以下のように評価した.血流シグナルを認めない(-),血流の乏しい (+),(+)と(+++)の中間の(++),血流の豊富な(+++).組織型別にバスキュラリテイ,さらに血流波形解析を行った23例においてpalsatility index (PI)を比較検討した.
【結果】
組織型別のバスキュラリテイを表Ⅰに,PIを表Ⅱに示した.乳腺症では40%が血流シグナルを認めなかった一方,癌で血流を認めなかったものは27例中1例のみであった.さらに乳腺症,DCIS,浸潤癌の順にバスキュラリテイが多くなる傾向を認めた.PIは組織型別に差を認めなかった.
【考察】
乳房超音波診断ガイドラインにおいて,腫瘤像非形成性病変診断の参考所見として「カラードプラで明らかに多くの血流信号を検出できる場合は悪性を疑う根拠となる」と記述されているが,これを裏付ける結果が得られたものと考える.PIについて,西神戸医療センターにおける腫瘤像形成性病変における検討では乳癌1.37±0.36,良性0.97±0.27といった値を得ている.乳腺内の低エコー域を呈する乳癌では腫瘍は小さな集塊でまばらに分布しており,細胞がぎっしりつまったものや線維化をきたした腫瘤像形成性のもと異なり,その腫瘍血管の末梢血管抵抗を反映したPIは比較的小さな値を示したため考える.
【結論】
乳腺内の低エコー域を呈する乳腺疾患に対するカラードプラ法においては,バスキュラリテイを評価することにより質的診断能の向上が期待できる.PIは良性と悪性で差を認めず,診断的有用性は示されなかった.