Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
産婦人科:胎児機能評価ほか

(S439)

体位により大きさが変化する胎盤後面静脈洞様所見を示した一例

Case report:chage of postplacental low echo lesion with maternal position

西本 幸代1, 中野 雄介1, 三杦 卓也1, 竹林 忠洋1, 西尾 順子1, 中井 祐一郎2

Sachiyo NISHIMOTO1, Yusuke NAKANO1, Takuya MISUGI1, Tadahiro TAKEBAYASI1, Junko NISHIO1, Yuichirou NAKAI2

1泉大津市立病院産婦人科, 2川崎医科大学産婦人科

1Obstetrics & Gynecology, Izumiotsu City Hospital, 2Obstetrics & Gynecology, Kawasaki Medical School

キーワード :

【緒言】
胎盤は胎児成分である絨毛が母体成分である絨毛間腔に浮かんだ状態の臓器といわれ,超音波断層法で認められる胎盤後面の低エコー領域は,胎盤早期剥離時の後血腫の所見としてしばしば認められる.今回経験した症例は,胎盤の肥厚と胎盤中央母体側に大きな低エコー領域を認めたが,領域内部に低流速の血液と思われる所見がみられ,臨床経過を観察していたところ体位の変化により消失と出現をくりかえし認められた.静脈洞の静水圧に伴う変化と考え検査・観察を行ったので報告する.
【症例】
23歳の初妊初産婦.自然妊娠し,近医で妊婦健診をうけていた.妊娠21週より子宮頸管長の短縮を認め子宮収縮抑制剤を内服するも,妊娠25週3日にさらに短縮を認めたため,当科に紹介され,同日入院となった.妊娠31週1日,超音波検査にて胎盤の肥厚と,胎盤母体面に低エコー領域(10.8×6.3cm,厚さ2.5cm)を認めた.その領域内部には低流速の血流を認め,母体の臨床症状や,超音波検査およびCTGで胎児に異常がみられないことより胎盤早期剥離で認められる後血腫とは異なるものと考え経過観察としていた.妊娠33週2日,超音波検査開始時には胎盤後面に低エコー領域を認めなかったが,徐徐に出現し,左側臥位で再び消失した.超音波造影剤(レボビスト®)を使用した観察では,投与直後に低エコー領域内部は造影され,その上部の胎盤には造影されなかった.体位変換による低エコー領域の出現消失も確認したが,出現時に内部はfine echoで充満され,流入血管様の噴出も認めた.MRI検査所見ではT1で胎盤と子宮筋層の間にややlow intensityの領域Tと,内部に多数のflow voidを認めた.妊娠36週1日,子宮収縮抑制剤点滴中止したところ,翌日陣痛発来し,分娩となった.2570g女児でApgar scoreは 9/9であった.陣痛中にも胎盤の低エコー領域は観察され,陣痛発作にて出現,消失を繰り返すことを確認した.娩出胎盤は肉眼的に異常を認めず,病理検査でも特記所見を認めなかった.
【考察】
体位変化や子宮収縮により変化する静脈洞様所見を呈した胎盤の一例を報告した.母体体位変換による静脈の圧迫,重力および子宮収縮に伴う母体静脈圧の変化により,絨毛間腔に血液の鬱滞がおこり出現した所見と推察されたが胎盤構造上の異常は明らかにはされなかった.