関 康¹, 一樋 政宏¹, 宇戸 朋之¹, 高村 学¹, 名渕 瑞生², 牧 一郎², 藤城 奈央³, 竹原 幹雄³, 今井 康陽⁴

Yasushi SEKI¹, Masahiro ICHIHI¹, Tomoyuki UTO¹, Manabu TAKAMURA¹, Mizuki NABUCHI², Ichirou MAKI², Nao FUJISHIRO³, Mikio TAKEHARA³, Yasuharu IMAI⁴

¹市立池田病院放射線科, ²市立池田病院小児科, ³市立池田病院産婦人科, ⁴市立池田病院消化器内科

¹Radiology, Ikeda Munichipal Hospital, ²Pediatrics, Ikeda Munichipal Hospital, ³Gynecology, Ikeda Munichipal Hospital, ⁴Gastroenterology, Ikeda Munichipal Hospital

キーワード :

【はじめに】
卵巣腫瘍の茎捻転はその捻転部を画像診断にて捉えることはなかなか困難で，その臨床症状から判断し手術に至るケースが多い．今回我々は，体外式超音波にて捻転部を捉えることができた卵巣腫瘍茎捻転の一例を経験したので報告する．
【症例】
症例は12歳女性．腹痛にて他院救急外来受診し，便秘を疑い内服にて加療するも翌日一回嘔吐．二日後他院にて胃腸炎と診断される．更に二日後腹痛持続するため，当院小児科を受診した．受診時血液生化学dataでは，RBC 493×104/μ，WBC 133.1×102/μ，CRP 4.7 ㎎/dlとWBC,CRPが高値を示した．精査目的にて腹部超音波検査を施行した．
【超音波所見】
両腎の軽度水腎症を認め，脾臓周囲および膀胱右頭側に少量の腹水を認めた．ダグラス窩にφ61.1×76.2×66.3mmのlow echoic massを認めた．辺縁には隔壁と思われる線状のhigh echoを有しており，内部エコーはcystにしては若干エコーレベルが高くfine echoを呈している事から卵巣嚢腫内の出血を疑った．高周波プローブにて正常虫垂を確認した後，子宮を観察したところ 子宮から連続して右頭側に走行する索状物がloop状となっているのが捉えられ，卵巣嚢腫の茎捻転を強く疑い婦人科を受診し，CE-CTを施行した．
【CT所見】
子宮の背側に径92mm大の腫瘤を認めた．腹側に石灰化と脂肪濃度を示す部分を認め，辺縁にはやや高吸収を示す皮膜様の構造が見られた．内部にもやや高吸収を示す隔壁状の構造が見られ，奇形腫と診断した．腫瘤の右腹側には軟部陰影が見られ，中心部に高吸収域を認めた．造影では腫瘤の壁や軟部影に少し染まりが見られ，腹水の貯留も認めた．症状と画像所見から卵巣奇形腫の捻転と診断し，緊急手術となった．
【手術所見】
右卵巣は径15cmと腫大を認め，時計回りに4回転していた．右卵巣は暗赤色に壊死しており温存は困難と診断．右卵管は浮腫を認めたが，壊死しておらず温存した（施行術式：腹式右卵巣摘出術）．腹水は血性，子宮は肉眼的には正常であった．腫瘍の内容液は大部分がコアグラ状の凝血塊で，脂肪と毛髪も認められた．病理組織診断：Mature cystic teraoma（dermoid cyst），rt. ovary Torsion and hemorrhage
【考察】
卵巣腫瘍の捻転は産婦人科の急性腹症では子宮外妊娠に次いで頻度の高い疾患である．比較的若年の生殖可能年齢に見られることが多いため，早期の処置による卵巣温存の可能性，特発性の激痛の除去，二次的な感染の合併の回避，捻転からさらに卵巣腫瘍破裂へと至り，大量の出血や内容物の腹腔内流出による腹膜炎の回避などの目的のため，緊急の外科的処置が必要となる場合が多く，術前の診断意義は高い．今回，非侵襲的診断法として，体外式超音波検査が卵巣腫瘍茎捻転の診断における有用性が示された．
【結語】
体外式超音波検査が診断に有用であった卵巣腫瘍茎捻転の一例を経験した．