Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
産婦人科:婦人科

(S435)

卵巣甲状腺腫の1症例

A case report of struma ovarii

津田 恭子1, 戸口 景介2, 内田 学3

Kyoko TSUDA1, Keisuke TOGUCHI2, Manabu UCHIDA3

1耳原総合病院内科, 2耳原総合病院外科, 3耳原総合病院婦人科

1physician, mimihara general hospital, 2surgeon, mimihara general hospital, 3gynecologist, mimihara general hospital

キーワード :

【はじめに】
卵巣甲状腺腫は,「腫瘍組織の全体が甲状腺組織によって占められているか,または肉眼で認められるような広範囲を占めるのも」とされており,定義を満たす卵巣甲状腺腫は,卵巣奇形腫の約3%,卵巣胚細胞腫瘍の約2%,全卵巣嚢腫の約0.5%と比較的まれな腫瘍である.我々は,体表超音波検査(以下US)で経時的に増大傾向であり,切除に至った卵巣甲状腺腫の1症例を経験したので報告する.
【症例】
65歳 女性
【既往歴】
58歳 子宮留膿腫のため子宮全摘出術
【基礎疾患】
甲状腺機能低下症
【現病歴】
2005年10月のUSでは,骨盤内に腫瘤像は認めなかった.2007年3月のUSで,右骨盤内に31×27mmの多房性嚢胞性腫瘤を認め,卵巣嚢腫が疑われた.2009年8月のUSでは,右骨盤内に多房性嚢胞性腫瘤を認め64×37mmと増大傾向であったが,子宮摘出術後であり,子宮との位置関係は把握できなかった.また,消化管との連続性も確認されなかった.その後,CT,MRIを施行し,虫垂粘液性嚢胞腫の可能性も疑われ,11月13日手術を施行.
【腫瘍マーカー】
CA19-9 18.9U/ml,CA125 15U/ml
【骨盤MRI】
腸骨レベル,右腸腰筋前方にT1強調画像で低信号,T2強調画像で高信号の74×50×62mmの多房性嚢胞性病変を認めた.
【手術所見】
右卵巣から発生した7cmの嚢胞性腫瘤を認め,右卵巣嚢腫と診断した.正常虫垂は嚢胞性腫瘤に炎症性に癒着していた.
【病理所見】
右卵巣は,Follicular cystの形成を伴う甲状腺組織で構成されており,他の奇形腫の構造物は認められず,悪性変化は認めなかった.
【考察】
本症例の腫瘤は,回盲部付近で骨盤内の比較的高位にあり,子宮摘出後であり,画像検査上,解剖学的に腫瘤が卵巣由来か消化管由来か判別が困難であった.また,卵巣甲状腺腫のMRI所見は,卵巣粘液性嚢胞腺腫や卵巣粘液嚢胞腺癌と類似するので術前に両者の鑑別は困難と言われている.卵巣甲状腺腫の約1〜15%に甲状腺機能亢進症を呈し,診断のきっかけになる場合があるが,本症例では,骨盤内腫瘤が指摘される以前より甲状腺ホルモン補充療法を受けているが,腫瘤の増大に伴う甲状腺機能の変化は認めなかった.卵巣甲状腺腫は,比較的まれな腫瘍で,一般的に術前診断が困難な腫瘍とされており,若干の文献的考察を加え報告する.