Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
産婦人科:胎児診断(3)

(S431)

簡便な妊娠中期以降の胎児超音波スクリーニング検査の有用性

An unique fetal echo screening test

谷垣 伸治, 松尾 典子, 井上 慶子, 上原 彩子, 橋本 玲子

Shinji TANIGAKI, Noriko MATSUO, Yoshiko INOUE, Ayako UEHARA, Reiko HASHIMOTO

杏林大学産科婦人科

Department of Obstetrics and Gynecology, Kyorin University School of Medicine

キーワード :

【はじめに】
胎児期における超音波検査は,胎児発育の評価及び胎児形態異常を見出し,診断することを主な目的とし,産科医療において必須である.しかし現在,胎児超音波検査を施行するにあたり,標準検査が明確に示されておらず,いわゆる“どこまで見たらいいのか”ということが議論されている.検査には,スクリーニング検査と精密検査があり,全ての施設で精密検査を行うことは不可能かつ非効率的である.今回我々は,診断を行わず,2次施設において精密検査を行う症例を抽出する目的のみの検査と位置づけた,簡便なチェックポイントからなる妊娠中期以降の超音波スクリーニング検査を作成し,その有用性について検討した.
【対象】
2008年3月から2009年12月までに胎児超音波精査外来を紹介受診した妊娠中期以降の102例を対象とした.
【チェックポイント】
超音波検査における以下の所見をチェックポイントとした.①子宮内胎児発育遅延(IUGR)を認める②頭部 頭蓋から突出する病変がある,10mmルール 側脳室三角部径が10mm以上後頭蓋窩が10mm以上③胸部 胸腔内に心臓以外の低エコー領域がある④心臓 内臓錯位である,心四腔断面の欠如(心房・心室の存在の確認のみ),左右の心房・心室がほぼ同じ大きさになっていない⑤腹部 腹腔内に胃胞及び膀胱以外の嚢胞性低エコー像がある,腹囲が-2SD未満である⑥四肢 大腿骨長が-2SD未満である⑦脊椎 側弯を認める⑧羊水量 羊水ポケット法で羊水過多(7cm以上),羊水過少(2cm未満)である
【方法】
当院紹介時の超音波検査において,チェックポイントを認めるか否かについて後方視的に検討し,このチェックポイントが精密検査を要する症例に抽出に有効であるか考察した.
【結果】
102例のうち,前医所見においてチェックポイントを認めた症例は81例であった.そのうち前医にて認めたチェックポイントが,当科では認められなかった症例が7例(10mmルール4例,IUGR1例,心四腔断面の欠如1例,羊水過多1例)あった.大腿骨長短縮を認めた症例のうち2例は,胎児異常ではなかった.従って前医にてチェックポイントを認め,胎児異常を認めた割合は81例中72例(89%)であり,当科にて認めたチェックポイントからでは74例中72例(97%)であった.チェックポイントを有さない,すなわちチェックポイントのみでは当外来受診理由を抽出できなかった21例の紹介理由は,胎児不整脈及び心拍数の異常が9例,胎児心四腔断面以外の心構築異常の疑いが4例,尿管の拡張が3例,胎児付属物の異常が2例,頭部の異常2例,胸腔内の高エコー像が1例であった.精査にてチェックポイントを有さず胎児異常を認めた割合は21例中16例(76%)であったが,出生後治療を要するものは4例(心構築異常2例,肺嚢胞性腺腫様奇形1例,ガレン静脈瘤1例)のみであった.
【考案】
胎児超音波スクリーニング検査の目的を,2次施設において精査する症例を抽出し,出生後早期からの治療を可能にすることを中心とするならば,このチェックポイントの有効性は高いと思われる.胎児異常をさらに抽出する為には,胎児心拍数及びリズム,尿路の確認をチェックポイントに加えることが必要と思われるが,出生後早期からの治療の必要性無く,疑問である.反対に心構築異常の抽出には,このチェックポイントのみでは不十分である.また,不要な精査をさけるためには,チェックポイントを見出す技術の向上を図る必要があるが,議論の余地がある.