Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
産婦人科:胎児診断(3)

(S431)

単一臍帯動脈から胎児をどこまで診るべきか?

Clinical significance of single umbilical artery in terms of the detection of fetal abnormalities

吉里 俊幸

Toshiyuki YOSHIZATO

福岡大学病院総合周産期母子医療センター

Center for Maternal, Fetal and Neonatal Medicine, Fukuoka University Hospital

キーワード :

【背景と目的】
単一臍帯動脈では,胎児膀胱の両側を走行する動脈が一側しか認められないことから,カラードプラ法を用いるとその診断は妊娠中期においても極めて容易である.本研究では,胎児形態学的異常をみつける端緒となる単一臍帯動脈の診断の妥当性を検証することを目的として,当センターで単一臍帯動脈と出生前に診断された症例について合併する胎児の異常所見を後方視的に検討した.
【方法】
2002年1月から2009年12月までの8年間に,当センターで出生前に単一臍帯動脈と診断された症例43例を対象とした.症例毎に胎児異常所見として,1)子宮内発育遅延(IUGR),2)心臓大血管系形態異常(以下CVS),3)CVS以外の形態異常(以下extra-CVS),4)染色体異常の有無について検討した.各異常所見は,出生前診断されたものは,出生後に確定診断を行い,出生前診断されなかったものは出生後の診断名とした.
【結果】
1)対象となった43例で,IUGR,CVS,extra-CVSのうち1つ以上の異常を認めたものは38例(88.4%),いずれの異常も認めなかったものは5例(11.6%)であった.2)1つ以上の異常を認めた症例の内訳(重複あり)は,IUGR:30例(69.8%),CVS:23例(53.5%),extra-CVS:16例(37.2%)であった.3)CVSの内訳(重複なし)は,心室中隔欠損症:10例,両大血管右室起始症,左心低形成症候群,房室欠損症:各2例,その他:7例であった.前述の38例について1つの異常所見に留まるもの(単独群:12例),2つ以上認めるもの(重複群:26例)に分けてさらに検討した.4)単独群12例の内訳は,IUGR:9例,extra-CVS:3例であった.5)IUGRの9例のうち,2例では臍帯動脈は出生後2本であることを確認したが,1本は索状で血流を認めなかった.6)extra-CVSの3例はすべて腎臓の形態異常であった.7)染色体異常は,単独群では認められず,重複群では10例であった.8)染色体異常の内訳は18トリソミー:8例,部分18トリソミー:1例,13トリソミー:1例であった.
【結論】
単一臍帯動脈を合併する胎児においては,高率に胎児異常を認めた.子宮内発育遅延,心臓大血管系形態異常の合併が多く,胎児異常をみつける端緒としての意義は大きい.心臓大血管系形態異常では心室中隔欠損症の合併が多く,心四腔断面だけではなく,流出路を含めた精査が必要である.胎児異常所見を重複して認める場合には染色体異常,とりわけ18トリソミーの可能性を念頭に置く必要がある.