Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
産婦人科:胎児診断(3)

(S430)

胎児心スクリーニングで何を見るべきか?〜胎児心スクリーニングの現状と課題〜

The fetal cardiac screening point.The preset status and problem of fetal screening

川滝 元良

Motoyoshi KAWATAKI

神奈川県立こども医療センター新生児科

Neonatology, Kanagawa Childrens Medical Center

キーワード :

【目的】
左心低形成症候群(HLHS),完全大血管転位症(TGA),総肺静脈環流異常(TAPVD)などの重症心疾患の治療成績は近年急速に向上している.ショック状態や高度の低酸素状態を回避し良好な全身状態を維持して外科治療を可能にする胎児診断の意義はますます高くなっている.胎児心スクリーニングで何を見るべきか?を論じるにあたり,胎児心スクリーニングの現状と課題について,当院のデータベースをもとに検討した.
【方法】
1993年から2008年までに生後1年以内に治療された心疾患1840例および,この間に胎児診断された心疾患700例を対象に,生後1年以内に治療を要した重症心疾患の胎児診断率,新生児期に手術を行った最重症例における胎児診断率,主な心疾患の胎児診断率について経年的な変化を検討した.
【結果】
1.重症心疾患の胎児診断率は1999年以前は10-16%,2000-2003年は25-30%,2004以後は30-40%であった.2.2004年以後の新生児手術症例では胎児診断率は40-50%であった.3.左心低形成症候群および無脾症候群は2000年以前の10%以下から2000年以後70%以上に向上した.ファロー四徴症(TOF)は2004年以前の10%以下から2005年以後50%以上に向上した.完全大血管転位(TGA)は2000年以前は0%,以後も10%前後と低率である.単独の総肺静脈環流異常(TAPVD)は2008年までは胎児診断症例はなかったが,2009年に初めて2例の胎児診断症例があった.
【考案】
超音波でどこまで見るべきかを考えるにあたり大切な点は,現状の重症心疾患率を把握し,それに基づいて議論すべきと考える.近年胎児心スクリーニングが急速に普及しつつあることは,今回のデータの経年的な変遷をみると明らかである.いまや単心室疾患のほとんどが胎児診断されるようになった.その結果,ショック状態や高度の低酸素状態で緊急入院する新生児はほとんどいなくなった.また,TOFなどの流出路狭窄疾患の過半数が胎児診断されるようになった.胎児心臓病研究会から出されたレベル1の胎児スクリーニングが広く実施されていることが推測される.現在残された課題は,TGAとTAPVDである.Five Chamber View(5CV),Three Vessel View(3VV)まで観察範囲を広げ,大血管の大きさだけでなく,大血管の前後の位置関係,心室とのつながりなど新しいスクリーニングの視点が必要になる.また,TAPVDのスクリーニングにはカラードプラーが必須である.これらのスクリーニングはレベル1を超えたものであるが,最近の超音波機器の進歩により画質が著しく向上しており,カラードプラーをレベル1のスクリーニングに組み込めば精度向上と時間短縮が期待できる.