Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
産婦人科:胎児診断(3)

(S430)

当院における18trisomyに関する胎児診断および出生後の予後の検討

Diagnosis of 18 trisomy using ultrasonography

鮫島 浩輝

Kouki SAMEJIMA

埼玉医科大学総合医療センター産婦人科

obstetrics and gynecology, Saitama Medical Center

キーワード :

【はじめに】
18トリソミーは常染色体異常の中では21トリソミーに次いで多く,6000〜8000分娩に1例程度の比較的高い発生頻度である.予後はきわめて不良であり,平均生存期間は2〜3か月であるが,生後数時間〜数日で死亡することが多く,1年以内に90%,10歳までに99%の児が死亡する.女児に多く,子宮内胎児発育遅延(IUGR)及び羊水過多を伴うことが多く,重度の先天性障害を呈する.具体的には小脳低形成,耳介低位,overlapping finger,口唇裂,口蓋裂,等多くの奇形及び重度の知的障害があり,また先天性心疾患がほぼ必発する.先天性心疾患は心室中隔欠損症,心内膜症欠損症などのほか,単心室,総肺静脈環流異常症など,きわめて重篤な場合も少なくなく,先天性心疾患の重症度は生命予後に重要な影響を及ぼす.本症の確定診断は染色体検査であるが,手技の問題・侵襲性の問題もあり安易に施行できる検査ではなく,まずは超音波検査によるスクリーニングが大切である.
【対象】
2003年1月〜2009年7月までの7年間に当院へ紹介・管理された症例のうち,出生前もしくは出生後に染色体検査により18トリソミーと診断された17例につき,超音波的特徴・経過等を後方視的に検討した.
【結果】
当院への紹介初診日の平均は妊娠27週5日(16週〜36週)であり,22週以前の症例は2例であった.また,母体の平均年齢は36歳9カ月で,経産回数の平均は0.88回であった.診断方法として出生前に染色体検査を施行したものが15例,出生後に診断されたものが2例であった.当院では分娩方針として胎児適応での帝王切開術を施行するか,出生後の蘇生処置をどの程度まで希望するか等は,新生児科Drを交え,本疾患の予後を十分に説明した上で患者本人に選択させているが,分娩週数の平均は35週1日で,胎児適応で帝王切開となったものが4例(骨盤位2例,胎児心音異常(NRFS)2例),その他は経膣分娩10例,人工妊娠中絶3例であった.児の転帰としては出生当日に死亡となったものが4例,数日で亡くなったものが1例,1か月で亡くなったものが2例,3か月で亡くなったものが1例,1歳半で亡くなったものが1例,子宮内胎児死亡(IUFD)2例,人工妊娠中絶3例,不明が3例であった.各症例の超音波所見としては,以下のような頻度で所見が得られた.心奇形はほぼ必発で,そのうちVSDが多かった.IUGR,耳介低位,小脳低形成,overlapping finger,羊水過多等の頻度が高い.心奇形 16例 94%,IUGR 14例 82%,耳介低位 14例 82%,小脳低形成 13例 76%,VSD 12例 70%,overlapping finger 12例 70%,羊水過多 11例65%,左心低形成 3例18%,横隔膜ヘルニア3例 18%,ゆり椅子足底 3例 18%,口唇裂 2例 11%,内反足 2例 11%,臍帯ヘルニア 2例 11%,臍帯水腫 2例 11%,cystic hygroma2例 11%,水腎症 2例 11%,大総脈右室騎乗 2例 11%.また,上記の他に1例(5%)ずつに認めた所見として小顎症,大動脈狭窄症,肺動脈狭窄症,両大血管右室起始症,片腎欠損,陰嚢水腫等があった.
【考察】
母体平均年齢が36歳9カ月と高く,高齢妊娠の場合はより入念な超音波スクリーニング及び羊水検査希望の有無を確認することが必要である.超音波所見としては比較的分かりやすいIUGRと羊水過多がある時に本疾患を疑い,その他の所見を探すと見逃しが少ないであろう.可能であれば妊娠中断が可能な22週以前に診断することが望ましく,当院では18〜20週でスクリーニングとしての項目を設け,診断できるよう努力している.高次医療機関レベルではなく,一般的な超音波スクリーニング法のさらなる普及が望まれる.